白熱のシーズンが終わった国内女子ツアー。今季全36試合を振り返り、大会ごとに印象に残った“1シーン”を紹介する。
■アクサレディスゴルフトーナメント in MIYAZAKI(3月28~30日、宮崎県・UMKカントリークラブ、優勝:工藤遥加)
18番グリーンで2メートルのバーディパットを沈めた瞬間、工藤遥加の表情からようやく力が抜けた。プロテスト合格から15年、JLPGA入会から4991日目。ツアー史上2番目に遅い初優勝の舞台は、桜満開の宮崎だった。
重圧との戦いは長かった。父はプロ野球224勝の名左腕・工藤公康氏。「不甲斐ない娘で申し訳なかった。実力以上に注目されて、やめたいと思ったこともある」。そう語るほど、結果が出ない日々は苦しかった。
2021年、父が福岡ソフトバンクホークスの監督を退任したあと、妻に「これから何がしたい?」と問われ、紙に書いた言葉は「遥加を勝たせたい」。今大会へ向かう朝、母がその紙を再び見せてくれたという。「親の愛ってすごいなと思った。頑張ろうと思えた」。
優勝は、突然訪れたチャンスから始まった。開幕4日前、主催者推薦で急きょ出場が決定した。18歳でプロになり、32歳でつかんだ初V。グリーン脇では同期の青木瀬令奈と抱き合った。
そしてもうひとつ、工藤を変えた存在がある。女子ソフトボール二刀流の藤田倭(ふじた・やまと)さんとの出会いだ。「失敗はカッコ悪くない。チャレンジしないのがカッコ悪い」。そう言われて合宿に参加し、プロとしての覚悟を学んだ。その3カ月後には下部で初優勝。今回の初Vへとつながった。
「自分一人では勝てなかった。父にも藤田さんにも、仲間たちにも感謝しかない」
今年11月で33歳になった。遅咲きの花は、これからもっと鮮やかにツアーを彩っていく。
