白熱のシーズンが終わった国内女子ツアー。今季全36試合を振り返り、大会ごとに印象に残った“1シーン”を紹介する。
■ヤマハレディースオープン葛城(4月3~6日、静岡県・葛城ゴルフ倶楽部 山名コース、優勝:穴井詩)
当時42歳の全美貞(韓国)、39歳の藤田さいき、そして37歳の穴井詩。平均年齢39.3歳の最終日最終組による激闘は、この組で最年少だった穴井の勝利で幕を閉じた。
トータル13アンダーの大会記録に並び、美貞とともにプレーオフへ。降雨でコースが柔らかくなり「スコアが出る展開だった」と振り返るように、序盤で2つ伸ばして主導権を握りながらも、中盤以降はパーが続く粘りの展開。13番の3パットボギーを15番のバーディで取り返し、最後まで視界を途切れさせなかった。
勝負を分けた最終18番。穴井がパーで上がったあと、美貞は80センチのウィニングパット。誰もが“決まった”と思った瞬間、カップに蹴られた。その“まさか”に、穴井は即座に気持ちを切り替えた。「チャンスをモノにしよう」。プレーオフ1ホール目、迷いのないバーディで6勝目をつかんだ。
最終組では“若手”側に入る立場。「いい緊張感が一日中あった」と語りつつ、美貞とはクラブ談義が続く穏やかな時間もあったという。近年は地面反力の使い方を見直し、トレーニング量も増やすなど、フィジカル面の強化を継続。平均パット数も劇的に改善し、確かな成果が形となった。
シーズンを見渡すと、この一勝は“円熟”の象徴だった。落ち着き、準備、積み重ね。穴井詩が強さの質を変えたことを刻む、象徴的な一日になった。
