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土壇場の超絶ショット3連発、4人のPO、そして涙 お久しぶりの“これぞ渋野劇場”【2020-21年・担当記者が見たベストバウト】

土壇場の超絶ショット3連発、4人のPO、そして涙 お久しぶりの“これぞ渋野劇場”【2020-21年・担当記者が見たベストバウト】

配信日時:2021年12月16日 07時25分

まずはプレッシャーがかかるここで、残り95ヤードの3打目を52度のウェッジでピン1メートルにピタリ。バーディ必須というなかきっちりとスコアを伸ばし、トップグループに並んだ。こうしてプレーオフに突入するわけだが、そこには4人が名乗りをあげた。渋野と、ソンウのほか、この大会で旋風を巻き起こした高3のアマチュア・佐藤心結、そして初優勝がかかる木村彩子。ちなみにこの人数で延長戦を戦うのは、女子ツアーでは2006年の「ゴルフ5レディス」以来のこととあって、そのドラマを際立たせる重要なスパイスになった。

そんな誰が勝ってもおかしくない状況で、渋野が再び魅せる。18番を使用し行われた延長戦1ホール目。ここでは54度のウェッジショットで打った3打目がスピンで戻り、あと一筋違えばイーグルというショットでライバルたちにプレッシャーをかけた。無観客のはずのコースに、グリーン周りで戦況を見守っていた他の選手や関係者からの大拍手が響き渡る。

見せ場はこれだけでは終わらない。木村以外の3人が進んだ2ホール目でも、残り108ヤードから46度のウェッジで放った3打目が、1.5メートルにつくベタピンショットに。そして続くバーディパットを沈め、決着をつけた。19年末の「大王製紙エリエールレディス」以来となる優勝。それを決めた瞬間、トレードマークの笑顔を浮かべることなく、すぐに両手で顔を覆う渋野の姿がグリーン上にあった。

「勝てなかった2年間をいろいろ思い出しました。いろいろな人に、いい報告ができるなと思ったら涙が出てしまった」。歓喜の瞬間のことを優勝会見ではこう振り返った。米国女子ツアー参戦のために、トップが極端に低くなった新スイングなど、新たなことに挑み続けた1年が、ここで実った。その間には、どうしても“雑音”も耳に入ってくる。「新しいスイングで勝ったときに、言い方は悪いですけど、いろいろ言っていた人を見返したいという気持ちはありました」。慎重に言葉を選びながら、こう話す姿も印象的だった。

2年前のツアー初優勝はメジャー大会で達成したもの。その年には海外メジャーを獲り、一気に日本ゴルフ界の顔になった。最終日に8打差を逆転して勝った試合もある。このスタンレー後に優勝した「樋口久子 三菱電機レディス」も含め、これまでに積み上げてきた7つの優勝は、どれも印象的なものばかりだ。

今月12日まで行われていた米ツアー予選会でも、最終日前に大きくスコアを残しながら、ラスト18ホールでなんとか出場権獲得圏内に滑り込む劇的なものだった。どんな時でも“渋野劇場”は多くの人の心を揺さぶる。10月の東名カントリークラブで目にした光景も、今後の語り草の一つになるものだろう。(文・間宮輝憲)

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