「タイガー・ウッズなどは自分でインパクトを作り出すことができますが、道具の面でもそういう打ち方ができる工夫がされているということです」(辻村氏)
■アプローチの練習量多めで、基本動作にぬかりなし
辻村氏がもう一つ強さの理由として考えるのが、アプローチのうまさだ。19年のリカバリー率は14位で低くはなかったが、今季は現在1位。「ボギーが少ない理由としては、コースマネジメントのうまさもありますが、イージーなチップショットでの取りこぼしが本当に少ないんです。『ここからボギー…』というところでミスが続くと流れが一気に悪くなりますが、稲見さんにはそれがありません」。
これも練習を見ていて感じることだが、「超オーソドックスな基本の練習をずっとしています。スッと立って構え、クラブはやや吊り気味。グリップエンドが体の近くを常に通る感じで、ゆったりと振っているんです。無理に突っつきに行く動作がない。体とグリップを一緒にゆっくりと動かすため、軌道が安定していますし、ボールがフェースにもしっかり乗るため、適正なスピンもかかる」と、基本をしっかり抑える動きが身についているというわけだ。
最終日の4番パー5では、35ヤードの3打目を58度のウェッジで10センチにつけ楽々バーディ。簡単に見えるアプローチも、ピンがグリーンのいちばん奥とあって、多くの選手はグリーン手前からのアプローチを大きくショートするケースが目立ったが、稲見は基本動作でいとも簡単に“OK”の位置に寄せた。自他ともに認める練習量だが、多くの時間を基本動作に割いているからこそ、ボギーを打たないスタイルを築けている稲見。これからいくつ勝利を重ねるかますます注目だ。
