白熱のシーズンが終わった国内女子ツアー。今季全36試合を振り返り、大会ごとに印象に残った“1シーン”を紹介する。
■パナソニックオープンレディース(5月2~4日、千葉県・浜野ゴルフクラブ、優勝:菅沼菜々)
“スランプ”という長い暗闇を抜けた先に、ようやく光が差しこんだ。
菅沼菜々が1年7カ月ぶりのツアー優勝をつかんだのは、千葉・浜野で行われた「パナソニックオープンレディース」。最後のパーパットを沈めた瞬間、抑えてきた感情がこぼれ落ちる。苦しんだ2024年の記憶が、その場で一気によみがえった。
乃木坂46の熱心なファンとして知られ、“自称・アイドル”としてツアー会場でも人気を集めてきた菅沼。この日も優勝直後から長いサイン列ができ、声援を全身で浴びた。
スランプ期をどう乗り越えたのか。記者の問いに対し、菅沼が語ったのは、技術や数字ではなく“支え”の存在だった。「周りの方の支えがありがたく感じました。悪くてもずっと支えてくれるファンやチーム、応援して下さる全ての方に支えられていました」。苦しい時期ほど、ファンやチームのありがたさを痛感したという。
オフには臼井麗香とのユニット「chell'7(ちぇるなな)」でライブを開催。歌にダンスにと、プロゴルファーらしからぬ“発信活動”を続けた。だが成績が上向かない時期には、こうした活動が火種になることもあった。反対意見や辛辣な声も少なくなかった。
それでも菅沼が発信をやめなかったのは、ゴルフに興味を持たない層へ届けたいという思いがあったからだ。実際、彼女のファンにはゴルフをしない人も多い。“ゴルファーがアイドル活動をしている”という入り口から、少しでもゴルフの楽しさに触れてもらいたかった。
シード喪失、QT102位という現実を突きつけられたオフには、「ゴルフが楽しいと思えるようになるまで」と、1カ月半ほどクラブを置いた。1月のファンミーティングで再び力をもらい、練習を再開。応援する人たちの存在が、心を立て直すきっかけになった。
スランプの中でもアイドル活動を続けたのは、自分の形でゴルフを届けたかったから。その変わらない思いが、復活の一勝を呼び込んだ。
