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金谷拓実の前に突如現れた“2時間前”の男、石坂友宏【記者が見た2020年名場面】

金谷拓実の前に突如現れた“2時間前”の男、石坂友宏【記者が見た2020年名場面】

所属 ALBA Net
下村 耕平 / Kohei Shimomura

配信日時:2020年12月28日 07時35分

あとで石坂に聞くと、「ルーティンですね」と平然と答える。トップタイで迎えた最終日も、同じようにスタートの2時間前から石坂は練習グリーンにいた。最終組でスタートするはずの石坂に気づいた先輩プロたちも「早いな」と驚いたという。でも石坂にとって特別なことではなく、下部ツアーで60位台から上位を目指すときも、レギュラーツアーの優勝争いのなかでも変わらないルーティンだった。

レギュラーツアーで長く活躍する選手は、アプローチやパターといったショートゲームが上手い。片山晋呉や藤田寛之、谷口徹がそうだろう。彼らの成績はショットの調子に大きくは左右されない。ショートゲームがいいから、多少ショットが悪くてもスコアをまとめてこられる。もちろん難しいアプローチを避けるマネジメント力もあるだろう。年間通してずっとショットが絶好調という選手がいないのも事実。ツアールーキーの石坂もまたショートゲームに重きを置いている。

「ゴルフに関しては飛距離だけではなくて、小技の部分をもっともっと今以上に磨いていかないと、上で通用していかないと思っています。飛距離も伸びてきているので、飛距離があって精度があってというのも4日間良かったんですけど、もっともっと入れなきゃいけないパットだったり、これからも練習していきたいですね」

プレーオフに敗れた後、石坂は課題を語った。そう感じたのは、優勝した金谷の存在があったからだろうと思う。金谷は大会4日間を通して、ティショットの調子は決してよくはなかった。金谷は「パットが安定していたので、ショットが曲がっても落ち着いてプレーできた」と、粘りのゴルフで石坂に追いつき、プレーオフでは大きなミスをすることなく優勝をさらっていった。大会での金谷のフェアウェイキープ率は24位(54.17%)ながら、パーキープ率は1位(94.44%)だった。

決勝ラウンド2日間と4ホールのプレーオフを合わせて、22ホールを一緒に回った金谷との差を聞かれた石坂は、「プレーオフ3ホール目に決めなきゃいけないパットを金谷さんが先に決めて、ああいう部分は本当にすごいなと思います」とも言っている。金谷に次ぐパーキープ率2位(93.06%)は石坂で、わずか“1.38%”の差が勝敗を分けた。金谷もまた、ユーティリティを1本抜いて、フルショットしないグリーン周り専用のウェッジを1本増やすなど、「スコアを作る上で大切」というショートゲームを重要視している。

おそらく金谷は、大きなケガでもしない限り、賞金王に向かって突き進んでいくだろう。石坂はこのまま離されてしまうのか、それともついていくのか。ダンロップフェニックスのあの負けがあったからこそ、統合された2020-21シーズンが面白くなっていきそうな予感はある。(文・下村耕平)

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