予備日の月曜に競技がずれこんでしまえば、選手のスケジュールや、テレビ放送に影響も出る。「月曜にやるくらいなら、54ホールで切る覚悟もありました。ただ、日本プロというタイトルは過酷な条件でも勝って欲しいもの。72ホールやりたいという思いがあった。今日は、かなり強行に36ホールやらせていただきました」。
そういった大会側の固い決意、スタッフたちの影の努力は選手にも伝わっていた。大会を終えた石川は、「直前まで、気持ちを切り替えようと必死にしていたくらいだった。でも、開催されるとなったときに、やるからには絶対に盛り上げなきゃいけないと思った。 “魅せよう”とかそういうことではなく、中途半端じゃだめだと思った」。
2004年の「カシオワールドオープン」以来となる、鹿児島でのレギュラーツアーのトーナメント開催。当時は4日間で9969人が来場。今年は第1ラウンドこそ1465人の動員に留まったが、最終日は4282人、3日間合計では7968人が訪れた。最終日は、早朝にもかかわらずスタート前にパター練習をする石川を、グリーンをグルリと囲んで見守るファンの姿があった。本戦中も大ギャラリーに囲まれ、ティショットを打つたびに『すごいなあ』と声が聞こえる。グリーンに上がれば歓声が上がり、終盤の優勝争いはハン・ジュンゴン(韓国)にとってはほとんどアウェーに感じただろう。「一人の選手をひいきするのではなく、プロですから、選手の持っているキャラクターによって(報道で)扱う量が決まって当たり前。沢山扱われるプロが勝つことで、ゴルフ界が存続していく。どのスポーツ界でも一緒だと思う」と倉本が語ったが、石川の優勝はゴルフ界はもちろん、この地域に力を与えたにちがいない。
表彰式や優勝会見が終わり、大会が一段落ついたのが午後8時過ぎ。すっかり日が落ちた会場から、スタッフがバスで会場を後にする時に、石川がそばを通り過ぎた。「ありがとうございました!」と手を振る石川に声援を送るスタッフの表情には、疲れを感じさせない笑顔が浮かんでいた。(文・谷口愛純)