崖っぷちの“ドクター・ストレンジ”が高知で躍動　ハッピーエンドにまっしぐら

＜カシオワールドオープン 3日目◇24日◇Kochi黒潮カントリークラブ・高知県（7335ヤード・パー72）＞

ドクター・ストレンジを知っているだろうか。スパイダーマンなどと同じアメリカンコミック『マーベル・コミック』のヒーローで、映画化もされているキャラクターである。ドクター・ストレンジことスティーヴン・ストレンジは、元々ニューヨークで働く天才脳外科医。だが、事故により両手にケガを負ってしまう。キャリアを失った彼は、あらゆる治療法を試した末に神秘の力にたどり着き、魔術を身につけて悪と戦っていく−というストーリーだ。

この影の正体はひっとして…【カシオワールドオープン大会フォト】

そんなドクター・ストレンジと同じファミリーネームを持つスコット・ストレンジ（オーストラリア）も大きなケガを乗り越え戦っている。アジアンツアーの「ミャンマーオープン」、欧州ツアーの「ウェールズオープン」といったタイトルをひっさげ2013年から日本ツアーに本格参戦したもののここまで未勝利。16年の「三井住友VISA太平洋マスターズ」では、キャディが投げたボールを取り損ね左手人差し指の腱を断裂した。その後も無理をしてプレーを続けて、さらに悪化してしまう。

「まったく指が曲がらなくなった」と約8カ月間もクラブを握れなくなった。結局17年は全休。今年1月に治りはしたが、完全に元に戻ったわけではない。グリップを以前よりも太くして対処しているほか、「通常はないんだけど、寒い日は曲げるときに関節が痛むんだ」という状態。公傷の資格で出た今シーズンもこれが最終戦だが、賞金ランクは112位。シード復活に向けてまさに崖っぷちだ。

それがどうだろう。3日目を終えて首位と2打差のトータル8アンダー・2位タイと一発逆転の見える位置につけている。ドクターは魔術を使って戦うが、スコットは「積み重ねてきたハードワークが自分の武器。魔法と言うよりも僕はそれだね」。この日はチャンスホールの18番で、グリーン近くのバンカーから“ホームラン”で奥のカラーまで飛ばしてしまうも、20ヤード近くあったカップに向かい、下りのアプローチを上手く寄せてパーでフィニッシュ。「最後も自分が積み重ねてきたものを出せて、上手くパーセーブできた。明日に向けて頑張れたかな」と鍛錬の成果で最終日へと望みをつないだ。