そして、最終日を首位と2打差で迎えることになった3日目の夕暮れは「明日は勝手に勝ちたい意識が入ってくる。それをどこまで抑えられるか」。メンタル面のことを、こうして自ら語る松山を見たのは、少なくとも私にとっては初めてのことだった。
いざ、最終日。「スタート前のウォーミングアップが最悪だった」にも関わらず、2番でイーグル、3番でバーディー。そこで松山が挑んだチェンジは、常にリーダーボードを見るいつもの流儀を変えて「3番から15番まで一度もボードを見なかった」。
自分の世界の中でプレーしていた松山のゴルフは、打てばピンそばに付き、パットも難なく沈め、まるでノープレッシャーの練習ラウンドを見ているような錯覚さえ覚えた。
今週の松山に見て取れたさらなる変化は、取材に応える姿勢が明らかに柔らかくなり、言葉数も格段に増えたこと。聞けば、全英オープン前に欧州ツアーのアイリッシュオープンに出場した際、日本人メディアが誰もおらず、毎日のラウンド後の取材が無くて「楽だったけど淋しかった」と照れ笑いしながら明かした。
思えば、欧州ツアーの試合に出たこと自体も「出てみようかな」という初挑戦。取材されない淋しさを知り、取材されるのも悪くないと知ったのも初めてだった。