プロを目指していたころは、貧しかったが夢があった。米ツアーに辿り着いた当初は、ゴルフでお金を稼げることが、ただただうれしく、優勝を目指すことはボーナスみたいなもの。そういう時代は「恐いものは何一つなかった」。
だが、初優勝を挙げ、本当の意味でトッププロたちと同じ土俵に上がってみたら、自分だけがとても場違いな気がしてきて、そのくせ昔に戻ること、落ちることが恐くなったそうだ。
「でも、先週のニューオーリンズのとき、もっと自信を持たなきゃいけないという話をキャディとした。今週、週末に駆け付けてくれた妻と娘の顔を見て、僕は僕自身に『オマエならできる、自分を信じろ』」と言い聞かせた。『自分ならできる。やろう。やらなくてはいけない』。そう思ったら、力が出た」
ひたすら上ることより、落ちないようにしがみつくことのほうが苦しい。ハーンの勝利の涙は、そんな心境の表われだった。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)