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ライダーカップは欧州勝利 30年の「謎」の答えは、いかに!?【舩越園子コラム】

欧州チームがホームで優勝を果たした今年の「ライダーカップ」。

所属 ライター
舩越 園子 / Sonoko Funakoshi

配信日時:2023年10月2日 12時00分

ホームの欧州チームが終始米国を圧倒した
ホームの欧州チームが終始米国を圧倒した (撮影:GettyImages)

イタリア・ローマのマルコ・シモーネが舞台となった米欧対抗戦の「ライダーカップ」は、初日から欧州チームが5ポイントのリードを奪い、その差は2日目も変わらなかった。

愛するパートナーと歓喜の口づけ【写真】

最終日を迎えたとき、米国チームは5.5ポイントに対し、欧州チームは勝利に求められる14.5ポイントに目前まで迫る10.5ポイント。スピード決着が予想されていたことは言うまでもない。

いざ、シングルスマッチが始まると、タイレル・ハットン(イングランド)がブライアン・ハーマンを下した時点で、欧州チームの得点は14ポイントに達した。

だが、一歩も引けない瀬戸際に立たされた米国チームは、そこから意地を見せ、ブルックス・ケプカ、マックス・ホーマ、ザンダー・シャウフェレ、ジャスティン・トーマスが次々に勝利。11ポイントまで伸ばし、執拗に食い下がった米国チームの粘りは、あっさり終わっていたかもしれない最終日をエキサイティングな一日に変えてくれた。

しかし、米国のリッキー・ファウラーが16番で池に落とし、2ダウンで迎えた17番でバーディパットを沈めることができず、トミー・フリートウッド(イングランド)に右手を差し出した瞬間、欧州チームの5年ぶり、15勝目が確定した。

2021年の前回大会で勝利した米国チームから、トロフィーを見事に奪い返した欧州チームの勝因は何だったのか。

初出場の選手は米国、欧州ともに4人。「経験値」という点では互角だっただろうか。それでも、欧州チームにはジョン・ラーム(スペイン)、ローリー・マキロイ(北アイルランド)、ビクトル・ホブラン(ノルウェー)という世界ランキング2、3、4位で絶好調の「ビッグ3」がそろっていた。

だが、欧州チームの最大の勝因は、キャプテンを務めたルーク・ドナルド(イングランド)の存在だったのではないだろうか。

今大会の欧州キャプテンは、そもそもはヘンリック・ステンソン(スウェーデン)だった。しかし、ステンソンがLIVゴルフへ移籍し、キャプテン職を放棄する形になったため、その代役として急きょキャプテンに抜擢されたのがドナルドだった。

それゆえ、ドナルドに残されていた準備期間は通常より5カ月も短かった。だが、会場の下見、必要な知識や情報収集、選手たちとのコミュニケーションに至るまで、ドナルドは限られた時間の中で最大限の努力と工夫を凝らし、戦略や戦術に関しても徹底的に話し合い、12人のチーム・メンバーから絶対的な信頼を得ていた。いざマッチが始まってからは、終始、冷静に見守っていた。

米国のTV中継で解説を務めていたポール・エイジンガーは、静かなるリーダーシップを示したドナルドこそが「欧州チームのMVPだ」と評した。思わず私も「その通りだ」と頷かされた。

それでは、トロフィーを奪われた米国チームの敗因は何だったのか。

開幕前から、何かと“ゴタゴタ”が見て取れたことは否定できない。「事前の下見ラウンドには12人中9人しか参加しなかった」「現地入り後もチーム・ディナーは、なかなか全員参加とはならなかった」と、ある米国人記者は嘆いていた。

とはいえ、最終日のシングルスマッチで巻き返そうと奮闘した米国チームの戦いぶりは大いに見ごたえがあった。それでも米国チームは敗北したが、世界のゴルフファンは米欧双方の熱い戦いを十分に堪能したのではないだろうか。

「僕のチームは、みんな素晴らしい選手ばかりだ。そして、どちらのチームの選手も、よく頑張ってくれた」

キャプテンを務めたザック・ジョンソンの言葉に、米国チームの選手たちは頷き、欧州チームの選手たちも温かい拍手を送った。そして全員が相手チームの一人ひとりとハグを交わし、健闘を讃えあった。この場面を世界に披露することが、ライダーカップを開催する最大の意義なのだと感じさせられた。

米国チームのアウェイ戦での勝利は1993年以降、一度も達成されていない。

「なぜ、敵地では勝てないか? それは、この30年の謎だ。答えがわかっていたら、僕たちはとっくの昔に、その謎を解いている」

開幕前、ジョンソンはそう言っていた。だが、それは謎ではないように思う。欧州キャプテンのドナルドは、閉会式で開口一番、敵地で奮闘した米国チームを讃え、「ホームの僕らが有利だったことは間違いない。ローマの大観衆の声援が僕らの大きな力になった。パワーをもらった。ありがとう」と、ホームのファンに感謝した。

そう、ジョンソンが「謎」と呼んだものは、謎と呼ぶほどのミステリーではないのではないだろうか。選手とファンが一体化して、良き戦いが繰り広げられる。それがライダーカップ、それがゴルフ。

そんなことを考えさせられた3日間だった。

文・舩越園子(ゴルフジャーナリスト)

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