世界ランク3位のステンソンが精一杯のプレーで勝利を目指しても、世界ランク96位のエブリーに逆転されて敗れるのだから、ステンソン自身が言っていたように、彼の惜敗は昨今の米ツアー選手たちの「格差」が縮小し、いつ誰が勝っても不思議ではない戦国時代と化していることを実証する形になったと言っていい。
予選2日間のヒーローだったホフマンは世界ランク137位で同大会に臨んだ。最終的には4位に甘んじたが、優勝争いに加わっていた誰かの何かがほんのわずかでも違っていたら、ホフマンが優勝を飾った可能性は大いにあった。世界ランク132位で臨んだ石川遼にだって、優勝は厳しいとしても上位フィニッシュするチャンスは大いにあったし、世界ランク16位の松山英樹の優勝の可能性は今大会のみならず彼が出場する毎試合でも十分にある。技術面、メンタル面を含めた総合力において選手間の差がどんどん縮まっている昨今は、世界ランクが示す意義も世界ランク3桁の選手と1桁の選手との差も縮小傾向にある。
米ツアー選手であれば、誰もが勝利への渇望を抱いている。だがあるとき、ある大会を制する選手は、そのとき、そこにいる選手の中で誰よりも勝利を得るための努力を多く続け、誰よりも強烈な戦意を胸に秘めながらその大会にやってきて、そして、その場で誰よりも優勝への巡り合わせに恵まれた人だ。
エブリーは昨年のパーマー招待の覇者だが、その優勝によって初出場した去年のマスターズでは惨憺たるプレーで予選落ちし、ひどく惨めな気持ちになったそうだ。「去年は戦えるだけの力がないのに出場資格を得て出てしまった。上海で出たHSBCチャンピオンズのときも、ひどいプレーしかできず、恥ずかしかった。一緒にプレーした世界のトップたちは僕のことを『コイツ、一体どんな資格でここに出てこれたんだ?』と呆れて見ていたと思う。だから僕は戦えるだけの力を付けた上で、そういう大舞台にどうしても戻りたかった」
この1年、かつてのウッズのコーチ、ショーン・フォーリーからスイングを学びながら練習に取り組んできたという。そして大舞台に戻るための絶好のチャンスとなったのが、ディフェンディングチャンプとして迎えた今大会だった。