それにしても、究極の感覚を呼び戻したいと思うということは、それが「なくなっている」「薄れている」「減っている」と気づいたことになる。なぜ、身についていたはずの感覚が、どこかへ行ってしまっていたのか。ウッズは、スイングの動作や軌道を測る機器、膨大なデータを分析する機器は「とても便利で役に立つ」と前置きした上で、「でも、それは究極ではないんだ」と、きっぱり。
今大会でウッズに伴って登場した新コーチのクリス・コモには、新しい技術や理論の指導を求めるのではなく、「僕が僕らしくスイングできているかどうかを確認し、相談する相手」になってほしいとウッズは言う。だから、ウッズはコモを「コーチ」とは呼ばず「コンサルタント」と呼んでいる。
幼少時代から生涯5人のコーチに付き、そのたびに新コーチの教えに従い、新たな試行錯誤を繰り返してきたウッズ。めまぐるしい日々の中、未来を見つめるあまり、過去に目をやる余裕はなかった。
だが、今、ようやく古き良き原点、出発点に目を向け始めたウッズ。原点を探す旅は30年以上も時を遡る長い旅になるけれど、生涯6代目のコーチ、いやコンサルタントが一緒だから、きっと、いい旅になる。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)