「与え、奪う。それがゴルフだ」
つたない英語でそう言ったカブレラの言葉は、あのときから忘れがたきフレーズとなって私の胸に刻まれている。
与え、奪う――言い得て妙だ。常に2者択一の賭けをしながら豪快に生きてきたカブレラは、メジャー2勝を得たものの、米ツアーではそれ以上は勝てず、世界30勝を挙げたものの、09年マスターズ以後は主要なツアーでの勝利から遠ざかり、天の神様から「与えられたもの」と「奪われたもの」がはっきり二分されたような戦績だった。
今季も成績は振るわず、フェデックスカップ158位という位置で今大会にやってきた。11番と12番でバーディ、13番は175ヤードからの第2打をカップに沈めてチップインイーグルを奪い、2位との差を広げた。その直後に2連続ボギーでスコアを落としたが、快走する姿も躓いた姿も、どちらもカブレラらしい一途なゴルフだった。
だが、2位との差が1打に縮まりながらも16番でドライバーを握り、パー5の17番では336ヤードもかっ飛ばして2オンに成功し、バーディーを奪ったアグレッシブな彼の攻め方は「勝つか負けるか、二つに一つ。与え、奪う。それがゴルフだ」と叫んでいるかのようだった。