「スタートホールでダブルボギーを叩いても、それで気持ちを落ち着けることができれば、それでいい。まだまだ先は長い。たくさんのゴルフが残されている。それに、どうせダブルボギーを叩くなら、最終ホールより最初のホールのほうがいい。そう思ってやっていた」
最終日の1番をダブルボギーで発進しながらも勝利したのは、2008年「全米オープン」を制したウッズ以来のこと。それを「快挙」と呼ぶとすれば、それは決して諦めない強い精神力がもたらした「心の快挙」だ。
「昨夜は今日のことを考え、勝てばマスターズだと思ったら胸がドキドキした。でも、考えても仕方ないと思い直し、目の前のことだけに集中しようと心に決めた。何が起ころうとも絶対に諦めないと心に誓った」
ネバ―ギブアップと忍耐で人生の山谷を乗り越えてきたからこそ、この日も苦難を乗り越えることができた。そうやってスポーンはオーガスタへの最後の切符をつかみ取り、あすからは夢の大地に初めて足を踏み入れる。
文/舩越園子(ゴルフジャーナリスト)
