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勝者と敗者、ケプカとウッズ【舩越園子コラム】

勝者と敗者、ケプカとウッズ【舩越園子コラム】

所属 ALBA Net編集部
ALBA Net編集部 / ALBA Net

配信日時:2018年8月13日 12時07分

今年1月、左手首を痛め、「軽いものを持つこともできなかった」という深刻な状況で4か月超も戦線離脱。「マスターズ」にも出られず、復帰の目途さえ立たない不安な日々を過ごした。「あのときほど戦いたいと思ったことはなかった。心の底から試合に出たいと思った」。

5月に復帰したときは、再び戦える状況が、ただうれしく、ひたすら感謝の念を抱いたそうだ。「もう一度、戦える。それだけでも十分に幸せだと感じた」。そう思ったら、多少のミスやスコアの乱れは、なんてことはないと思えるようになった。そんなメンタル面の変化がケプカに全米オープン連覇をもたらし、そして今度は全米プロ制覇につながった。

「今週はずっといいショット、パットが打てていた。練習場で(コーチの)クロードは僕の真後ろに立って『完璧だ』としか言わなかった」。その一言を信じ、終始、自信を抱きながらケプカは堂々とクラブを振り続けた。

単独首位で迎えた最終日。アダム・スコット(オーストラリア)、ジャスティン・トーマス(米国)、そして王者タイガー・ウッズ(米国)が追撃をかけ、優勝争いは大混戦となった。だが、後半に入ると、ケプカは黙々とパーを拾い続け、そしてベルリーブの最難関と言われる14番から17番の4ホールで危なげなく2バーディを奪い、ウッズに2打差を付けて見事に勝利を飾った。

18番グリーンからクラブハウスへと続く選手用の橋がある。ウッズが橋を渡るとき、その下には大勢のギャラリーが隙間なく立ち、橋の上を行くウッズに熱いコールを送った。勝者ではないとわかっていても、その姿は、まさにヒーローだった。

この日、大観衆がウッズの復活優勝を望んでいたことは疑いようもない。勝者ケプカが橋を渡るとき、橋の下の観衆はウッズのときより少しばかり減っていた。

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