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「マスターズはこういうアプローチばかり」 ナショナルチームが強化する“世界基準”のショートゲームと『☓』にも段階をつけるコースメモの使い方【合宿潜入】

JGA(日本ゴルフ協会)ナショナルチームの2月上旬のオーストラリア合宿に潜入し、強さの秘密を探った。

所属 ライター
田中宏治 / Koji Tanaka

配信日時:2026年2月12日 14時02分

ナショナルチームの合宿では世界の最高峰の舞台を想定して技術指導をしている(撮影:田中宏治)
ナショナルチームの合宿では世界の最高峰の舞台を想定して技術指導をしている(撮影:田中宏治)

JGA(日本ゴルフ協会)ナショナルチームはアマチュアとして実績を残すだけでなく、その後、プロとしても日本のトップを走り、世界で戦う選手を数多く輩出してきた。彼らはそこで何を学び、成長しているのか? 2月上旬のオーストラリア合宿に潜入し、その秘密を探った。

【写真】『☓』ではなく数字で表すのが”世界基準”

オーストラリア合宿は2週間のスケジュール。1週目はパースで行われた「オーストラリアアマ選手権」「オーストラリア女子アマ選手権」に出場。2週目は同じパースにある名門コース、レイク・カリンアップCCでの合宿が組まれた。一部の選手はパースを離れ、ニュージーランド開催の「アジア太平洋女子アマ」に出場している。

今回の合宿のテーマはショートゲーム。クレイグ・ビショップヘッドコーチ(以下、HC)がアプローチを担当し、パッティングに関してはスチュワート・リオン氏がエイムポイントの指導を行った。じっくりその内容を観察できたのは前者。筆者が潜入できた2日間の初日は、9番アイアンを使ったグリーン周りのランニングアプローチ、2日目はバンカーショットが中心だった。

共通するのは、「スピンでボールを止めることができないような難しい状況」を常に想定していること。ビショップHCの口からは「マスターズや全米オープンはこういうアプローチばっかりだよ」なんて言葉も飛び出す。常に海外、それも最高峰の舞台でのプレーが想定されているのが分かる。

ほかにも弾道計測機「トラックマン」を使用した距離感のチェック。一番長い距離で60ヤード。打つ距離に対してキャリーは前後5%以内のズレ(60ヤードなら前後3ヤード)が許容範囲。短い距離の場合は50センチ~2メートルほどの円の中にキャリーさせて縦と横のズレを無くすなど、キャリーの重要性を染み込ませている。

また、バンカーでは日本では古くから言われる「オープンスタンスでカット打ち」はNG。カットに打つとボールが滑って距離感が合わなくなるので、スクエアに構えることを推奨。ボールが左に飛びやすいツマ先上がりは、フェースの向きを示す棒を使って、「ピンに背を向けるぐらい」右に向いて構えないといけないなど、傾斜や目玉も実践しながら見せた。

ナショナルチームに選ばれるような選手でも、日本ではアプローチの専門的な指導を受ける機会は少ない。昨年の「日本アマ」を制した佐藤快斗(東北福祉大2年)もそうだった。

「ナショナルチームに入るまでショートゲームは感覚でやっていたので、きちんとした理論や言語化されたものを教えてもらって、それを取り入れることで、どんどん良くなっていると思います」。最初は“魔法”のようなビショップHCのお手本に驚いていた初参加の選手たちが、徐々に同じことができるようになっていくのは、彼の理論の確かさと、選手たちが持つ吸収力の賜物だろう。

ナショナルチーム3年目の佐藤にとって、今回の内容はすでに繰り返し教えられてきたことだが、決して停滞しているわけではない。「ドリルをもらって、それを練習して、次にビショップコーチに会った時に良くなっていれば、次のステップに進めるし、新たなエラーがあれば、また課題が与えられるので、常にアップデートしている形ですね」

1週目の試合の際には練習ラウンドのやり方やヤーデージブックの使い方にも指導があったという。UNIQLO、一般財団法人ファーストリテイリング財団の支援を受け、地区の強化選手として初めてナショナルチームの合宿に参加した佐藤小洛(明徳義塾高3年)がオーストラリア女子アマで使用したヤーデージブックを手に教えてくれた。

「(グリーン周りの)絶対に行ってはいけないところが『4』、そこから『3』『2』ときて、外してもいい場所は『1』という形でヤーデージブックに数字を書き込んでいくんです。行ってはいけないところに『×』をつけるというのは教わってきたんですけど、このやり方は初めてでした。『×』にもレベルがあるんですよね」

そのうえで練習ラウンドでは『1』に外したところからの練習に時間を費やす。「私はここに行ったら大変だと思って『4』から練習していたんですけど、ビショップさんに『4には外さないんだから、1から練習した方が試合で役に立つ』って言われました。実際に試合をしてみたら『4』には行かないんですよね。これを続けていけば、パーセーブ率が上がるんじゃないかと思います」。佐藤小洛にとっては遠征に参加したからこそ学べたことだった。

初めは目からウロコだったことも、ナショナルチームで繰り返し指導を受け、さまざまな国際経験を重ねるうちにそれが当たり前になっていく。世界基準が染み付いているからこそ、ナショナルチームを経験した選手たちには他にない強さがあるのだろう。(文・田中宏治)

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