■アダムの試合中の“脳内”を垣間見る時間
そこからはコースに移動し、アダムによるデモンストレーションが行われた。実際に1ホールをともに歩き、ティショット、ピンを狙うショット、そしてパッティングという3つの場面で、何を考えるべきかが伝えられたのだが、これが“アダムの脳内”を覗きこんでいるような感覚になった。ティショットでは、こんな具合だ。
「これは試合の1球目で緊張しているから、まずはさっきの練習場でのショットを思い出しておこう。左に行ったショットは少なく、少しフェードがかっていた。風は左から吹いているので、それを総合したうえでフェアウェイに置く球をイメージしている。このホールは左にいくと難しく、右は広いという部分も見ている。だからボールも少し左目に置いて、左から右へのボールを打つことで左へのミスのリスクを減らそう。ミスが出たとしても右のミスになるように。これはマイナスのことを考えているわけではないんだ。いろいろな可能性を考え、次のショットをよりよい状況で打つにはどうすればいいかをイメージする。さて、これ以上、話すとスロープレーで2罰打が科せられるから、そろそろ打とうかな(笑)」
ティボックスに入ってからアドレスまでに頭を巡っている考えが、すべて言語化される。その後の“第一打”がフェアウェイをとらえると、子どもたちからは自然と拍手が起こった。ピンまで残り111ヤードという状況からの2打目の時も同様。「ここはフェアウェイど真ん中だし、スコアを作りたい。ピンを狙う場合、リスクはあるのか? 例えば奥ピンでグリーン奥に外すと難しくなる、あるいは手前が下っているなどの状況も見て、それが確認できれば保険をかけながら打っていこう、などを考えている」。
この100ヤード前後の距離はアダム自身も、まだ自分の伸びしろだと考えているという話などもあった。またグリーン上に移動した後も、「素振りはしない」などのルーティンが伝えられ、ロングパット、ショートパットを実践。最後にアダムとのパッティング対決も行われ、アダムに勝った選手には、その場で直筆のサインボールがプレゼントされた。
■アダムの想いが伝わるイベントに
イベントの最後には質疑応答の時間も設けられた。『普段のトレーニングはどうしてますか?』、『状態のピークを保つ方法は?』など、次々と子どもたちからの質問が飛んでくる。『今、高校時代の自分にアドバイスするならば?』という質問には、「僕が高校生の時と今ではゴルフ自体が変わっているからアドバイスは難しいけど、自分を信じることができる何かを持ちなさいって言うかな。あとはアプローチとパターをもっと練習しろよって言いたい」と笑顔も交えつつ回答した。
なかには『日本オープンにはどうして出ているんですか?』というものも。そんな“素朴な質問”にも、「日本オープンは難しいから、絶対にここで勝ちたいと思っているんだ。君も一緒に出て、あのコースの難しさを経験して欲しいくらいだよ。僕の子どもの時の夢はオーストラリアオープンで優勝することだった。みんなも日本オープン、日本女子オープン優勝を目指して頑張って欲しい」と真摯なメッセージとして返した。
参加した埼玉栄高の神永直輝は、「迫力もあって、かっこよすぎました。ティショットも見たことないような球で、僕もああなりたいと思いました」と、プレーだけでなく、米ツアー屈指とも言われるナイスガイぶりにも感銘を受けたようだ。また女子選手で東海大相模中に通う阿部歩望は、「いろいろ質問できてとても貴重な時間でした。試合前の時間もより大事にしていきたいと思えました。あとは歩くスピードを見習いたい。緊張するとペースが速くなってしまうので」など感想を話した。
今後、意識していきたいことを聞かれた2人が共通して話したのが「自信を持ってプレーしたい」ということ。アダムの想いは確実に伝わっている。「みんな才能は十分にあったから、将来、成功しても何も驚かない。ただ、そうなるためにはたくさんの練習と、自信を持つことが必要になる」。世界の一流選手との時間は、子どもたちにとって成長を促す貴重な時間になったはずだ。(文・間宮輝憲)
