山崎がこういった心境に至ったのは、やはり今回の心筋梗塞によって“死にかけた”経験があったからだという。
「人間、いくらお金があっても死ぬときは死ぬんだなと思いました。心筋梗塞のような緊急手術が必要な場合においては、1000万円あったから助かった、200万円では助からないなんてことはない。それからは“仏”になったじゃないけれど、どんなアマチュアでも聞かれた教えるみたいな、そんな感じになりましたね」。
敢えて、山崎にこんな質問をしてみた。『せっかく助かった人生』なのに、何でまたボールを飛ばすことに人生をかけるのか。ドラコンにはそれほどの価値があるのか。
「それをやってきて悔いがなかったから。それで食えてこられたから。あと、それしかやることがないからですよね。人生の長い時間を飛ばすことに時間をかけてきたので、それが心筋梗塞で倒れたことで、飛ばせなくなって、そのまま終わっちゃってもいいのかと思いました。もちろん、心臓に負担がかかるというリスクもあるので無理はできないけれど、でも、もう一度やらないうちにやめるなんて、そんな中途半端に終われないという気持ちですかね」
九死に一生を得た山崎泰宏は、別の道を歩くのではなく、一つのことを究める道を歩くことを選んだのだという。