<コスモヘルスカップ 日本プロゴルフグランド・ゴールドシニア選手権 最終日◇2日◇南総カントリークラブ(千葉県)◇6621ヤード・パー72(グランド)、6117ヤード・パー72(ゴールド)>
水巻善典が、国内シニアツアー入り後としては2020年の国内シニアツアー「コスモヘルスカップ シニアトーナメント」以来となる通算6勝目を挙げた。
8月27日に68歳を迎えたばかりの水巻は、今大会がゴールドシニアのデビュー戦だった。この2日間、ともにエージシュートとなる「68」をマークし、トータル8アンダーで“ルーキーV”を飾った。
今大会は、“日本一”の称号をかけた公式戦。これまで、通算7勝を挙げた国内男子ツアーを含め、日本タイトルを獲得した経験はなかった。「プロゴルファーになって40年ぐらい経っていますが、公式戦にはまったく縁がなかった。最後のチャンス、遂につかめた」と笑顔を見せた。
「エージシュートを取る。それしか考えていなかった」。68歳になってから5日目の初日に早速達成すると、最終日も「またエージシュートを狙って」と4アンダーを目標に挑んだ。スタートから最終18番のグリーン上まで、「失敗しないように」という気持ちでプレー。その意識を最後まで途切れさせなかったことが、目標スコアの達成、そして公式戦との縁をつないだ。
そんな水巻が、シニアゴルファーなら誰もが気になる“飛距離の秘密”を明かした。「65歳ぐらいから球が飛ぶようになった」。取材の冒頭では、その理由について「ちょっと秘密があって…」と“企業秘密”にしようとした水巻。それでも最後には、その秘密を惜しげもなく明かしてくれた。
現在の飛距離は「当たると、280ヤードです」。国内男子ツアーで戦う若手選手たちとも大きな差はない。しかも、特別なトレーニングをしているわけではない。飛距離アップの要因は、スイングそのものにあった。
ゴルフのスイングでは、ティーチングプロから「下半身を回す」と教えられることが多い。しかし、水巻の考え方は逆だ。「自分の体が動かないってことが大きい」。加齢によって下半身の力が落ちるなか、無理に体を回転させるのではなく、あえて“動かし方”を変えることでクラブヘッドのスピードを生み出している。
「体を回転しようとすると、体が弱くなっているので、それに対して下半身が抑えられないからスピードが遅れるんです。なので、ほとんどのレッスンプロがやっちゃいけないって言う、スウェーの動きをすることによって、クラブを下ろすスピードがついて、最後(インパクト)のところは、クラブヘッドが通り過ぎる。腰が回っちゃうと飛ばない」
トップからの切り返しで腰が回転しすぎると、弱くなった股関節で受け止めきれず、体が早く開いてしまう。その結果、クラブヘッドを走らせる動きにつながりにくいという。
「僕たちがやっていた頃は、体を捻転しないとボールは飛ばなかった。体が柔らかい強い子たちは捻転しても振れるけど、歳を取ってくると、足が弱いのに、捻転したときに逆にスピードが遅くなってしまう。だからみんな飛ばないでしょ、歳を取ってくると」。
そこで水巻は、あえて腰の回転を抑えるため、左足に重心を乗せるように腰を少し横へ動かす「スウェー」の動きを取り入れた。腰の位置が後ろに引きすぎるのを防ぎ、体の開きを抑えやすくする狙いだ。そうすることで、体の正面でリリースを使いやすくなり、より早く振ることにつなげている。飛距離が出ることで、グリーンを狙うショットの距離は短くなり、バーディチャンスにつける機会も増える。この2日間も、その飛距離を生かした結果だ。
68歳を迎え、体の変化も感じるなか、スイングの調整などにも取り組みながら戦い続けている。「歳を取ってもゴルフができるというのはありがたいこと。この仲間が一人も欠けずに、また来年会えることを楽しみにしております」とほほ笑んだ。
国内シニアツアーのシード権を持たない水巻だが、今大会の優勝資格により、11月に行われる「日本プロゴルフシニア選手権大会 TSUBURAYA FIELDS HOLDINGS ULTRAMAN CUP」への出場権を獲得した。今年はまだ、“日本一”をかけた戦いが残されている。(文・高木彩音)
