白熱のシーズンが終わった国内女子ツアー。今季全36試合を振り返り、大会ごとに印象に残った“1シーン”を紹介する。
■ブリヂストンレディス(5月22~25日、愛知県・中京ゴルフ倶楽部 石野コース、優勝:佐久間朱莉)
シーズン序盤の佐久間朱莉は、“惜敗続き”の象徴のような存在だった。初優勝までに何度も涙をのんだが、そこからわずか1カ月。中京でのラウンドは、初優勝で得た自信が本物だったことを証明する時間になった。
首位のまま迎えた最終日。佐久間は4バーディ・ボギーなしの「68」で逃げ切り、トータル20アンダーの完全Vで今季2勝目を飾った。年間タイトル争いの主役へと駆け上がる大きな一勝になった。
勝負を決定づけたのは、いきなりの“おはようバーディ”だった。1番パー4、グリーン奥からのアプローチは想定以上に強く出た。「『段を下っちゃう』と思ったんですけど…ピンに向かっていったので、入ってくれないかなって(笑)」。
強烈な一打はピンに当たってそのままカップイン。結果としては2打得した形になり、同じ首位で並んだ荒木優奈がこのホールを3パットのボギーで落とし、いきなり2打のリードが生まれた。
この日は全体で156ヤード短縮されたアグレッシブなセッティング。「きょうは自分が伸ばさないと勝てない」と覚悟していた佐久間は、4番パー3で20センチにつける完璧なショットなど、6番までに4つ伸ばして主導権を握った。後半はショットの乱れが出たが、ボギーは14番の1つのみ。「自信がある分、ボギーを打っても焦らなくなった」と語ったように、14番では荒木に先にバーディを決められても動じず、1メートル強のパーパットを沈めてリードを維持した。
この勝利で、賞金ランキング、メルセデス・ランキングともに首位へ。「この位置に来られたからには、年間女王を目指したい。5勝ぐらいはしたいし、それ以上にメジャーで勝ちたい」。
ちなみに、もし2勝目が1試合早ければ世界ランキング75位以内で翌週の「全米女子オープン」に出られる可能性もあったが、「もう仕方ない」ときっぱり割り切った。
22歳(当時)の急成長はここからさらに加速していく。2025年を振り返ると、あの1番のチップインこそが、年間女王戴冠への大きな追い風だったのかもしれない。
