永久シードがない選手の場合でも、チームスポーツでないゴルフの世界では、本人が宣言しない限り”引退“はない。ただ、結果が出せなければ試合に出場できなくなる。そのため出場権を失ってフェードアウトする場合がほとんどだ。
一方で永久シードを獲得するとそうはならないが、反面さらに厳しい立場に置かれるケースもある。試合に出場するかしないかを自分で選べるからいい、というのは、不動や片山のように若いうちのこと。年齢を重ね、故障も出てきて、体力、気力が衰え始めた時、身の振り方を自分で決めなければならなくなるのだ。身体的にも精神的にも厳しい状況のなか、予選落ちや棄権が続き賞金ゼロ街道が続くという、厳しい状況に置かれることもある。
女子永久シード選手で、現役を続ける不動以外の身の振り方を見ると、樋口は1997年にLPGA会長になったのを機に現役を引退。大迫は故障で94年に当時は珍しい引退宣言をしている。岡本、ト、森口は、故障や病気に端を発し、フェードアウトしている。
永久シードという制度は、名誉という意味では素晴らしいが、結果的に選手にとって残酷なようにも見える。むしろ、世界ゴルフ殿堂のように、名誉ある地位をきちんと考えたほうがいいのではないだろうか。現在の日本プロゴルフ殿堂は、選出方法や趣旨においてこれとは異なるので、それとは区別して考えたい。その上で、アクティブメンバーであることを条件に、出場資格を与えるというシステムを取るのが自然に見える。
もちろん、現在の永久シード保持者には十分な敬意を払い、権利を尊重するのは言うまでもない。男女ともにツアー制度施行後、歳月が流れ、プロの数も多くなった今、今後について改めて考える。そんな時期が来ている気がしてならない。(文・小川淳子)