結果的に阿久津は「74」とスコアを崩し、シード権獲得どころか、翌週の出場権を得られる10位以内にも食い込めなかった。「やっぱり、アプローチの引き出しが自分には少ないと思いました。AbemaTVツアーでは52度と54度のウェッジを使って転がしていましたが、レギュラーツアーでは58度のウェッジで転がしつつ、上げるアプローチも身に着けなければいけません」。
阿久津にとって最終日は苦い一日となったが、収獲の大きい一週間であったことは間違いない。練習ラウンドでは日大の大先輩である片山晋呉と回り、技術的なことはもちろん、コースの攻め方や考え方などを教わった。大会が始まれば、同組の選手から何かを盗もうと目を凝らした。気になることがあれば、どのように打っているのか直接聞いたりもした。あとはそれを自分のゴルフに生かしていくだけだ。
残り試合で出場できるのは、「カシオワールドオープン」ぐらいしかないが、たとえそこで賞金シードを獲得できなくても、AbemaTVツアーで賞金ランキング9位に入っているので、来季前半戦の「ダンロップスリクソン福島オープン」までの出場権は得ている。
「できれば、ツアー開幕戦のSMBCシンガポールオープンに出場したいんですよ。セルヒオ・ガルシアやポール・ケーシー、デービス・ラブIIIといった世界のトッププレーヤーが出場しますからね。そのためには、賞金シードを獲らないと……」
仮に出場できれば、24歳の阿久津にとってすべてが勉強になるし、大きく成長するうえでの肥しとなるだろう。線の細さが気になるところではあるが、ツアーを盛り上げるためには若手の台頭は欠かせない。今大会で得た経験を、次のステップへとぜひ生かしてほしいし、そういう若手が次々に出てくるような方法をゴルフ界全体がもう一度考えるべきではないだろうか。(文・山西英希)
