空気が乾燥する本格的な冬が到来。この季節になると火の不始末による火事のニュースが世間を騒がせる。今回は、ゴルファーにとっても他人事では済まされない火事の問題を、四六時中ゴルフ漬けのロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が語る。
2025年1月、米・ロサンゼルスで起きた大規模な山火事のニュースは日本でも報道され、大きな被害を出したことは記憶に新しいところです。これにより松山英樹が2024年に勝った2月2週目に開催予定だった「ジェネシス・インビテーショナル2025」の開催コースが、火災から近いリビエラCCではなく、トーリーパインズGCに変更になりました。
日本でも、あちらこちらで大規模な山火事は発生していますが、今年も山火事が注目される季節がやってきました。過去には、ゴルフコースで発生した火事が、周囲の森に広がって山火事になったケースが報道されたこともあります。
多くの災害と同様に、身近に起きない限り真剣にとらえないのはあるある話ですが、ゴルフコースのスタッフは警鐘を鳴らしています。この機会に火事についてちゃんと考えましょう。
驚くことに、小さな小火(ボヤ)を含めると年間でゴルフコースの火災は100件〜200件程度はあると聞きます。取材をしてみると、禁煙が進んだことで、結果として、小火は減るどころか増えているそうです。
全館禁煙、指定場所のみ喫煙可能、というのがゴルフコースでもスタンダードになっています。これが徹底されれば、小火は減るはずなのですが、隠れて変な場所で喫煙する人がいて、灰皿がない建物の裏や、見つかりにくいコースの外周斜面などでタバコの不始末が原因だと思われる小火が増えているのです。
ただ、最近は、数ホールを横切って芝生が燃えてしまうような大火災は、ほとんどなくなったと聞きました。理由は、乗用カートの普及で、カート道路がホールとホールの間を断ち切るように伸びているので、カート道路で火災が遮断されるからということでした。
ティーイングエリアのように灰皿が設置されているところでは、あえて取り巻くようにカート道が整備されていますが、それは延焼を防ぐ意図もあるそうです。
さらに、取材を進めると、タバコではない原因の小火も起きているということでした。都市伝説だと思っていたダフって出た火花が火種になって、ラフなどが燃えるということも、実際に起きているそうです。キャンプなどの火起こしのように、たった1ミリの火花でも燃えやすい芝に引火して、少し風が吹いていれば、周辺を焦がすような小火にはなるそうです(別のコースの管理スタッフは、絶対にあり得ない、と否定していましたが……)。
日本の場合、ほとんどのコースではフェアウェイは高麗芝、ラフは野芝です。これらの芝生は、夏芝で、冬場は休眠して枯れたような乾燥した状態になっているので、火災が広まりやすい宿命なのです。
自分はタバコを吸わないから関係ない、と考えずに、誰でも火事の原因になってしまうことがあるのだと意識して、芝生をいたわる気持ちを持つようにしたいものです。
ゴルフコースは芝生がなければ成り立ちません。季節にかかわらず、芝生を大切に扱うことがあらゆる意味でゴルフにプラスになるのです。(文・篠原嗣典)
篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年東京都文京区生まれ。中学1年でゴルフコースデビューと初デートを経験しゴルフと恋愛のために生きると決意。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。ベストスコア「67」、ハンディキャップ「0」。
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