迷いながら打つと、脳から筋肉への指令がスムーズに伝わらず、思いもよらぬミスをしてしまうという。迷いを断つには決断力を高めるしかない。だが、そもそも決断力とは何なのだろう。それを知るために、決断力が高い人と低い人では、脳にどんな違いがあるのか、教えてもらった。
■脳には8つの番地がある
ピンまでの残り距離に応じた番手選びやインパクトの力加減などを決めきれないまま打って大ミス……。己の決断力の低さに落ち込んだ経験がある人も多いのではないだろうか?
「決断力が高い人と弱い人では、脳のMRI画像に明確な違いが見られます」と教えてくれたのは、脳診断のスペシャリストである加藤俊徳先生。
「脳には100億個以上の細胞があり、それぞれ運動や視覚、聴覚など特定の機能にかかわる細胞が集まっています。私はこれらを『脳番地』と呼び、以下の8つに分類しています。例えば聴覚が鋭い人の脳は、MRI画像を撮ると聴覚系脳番地が黒く映るなど、使い込まれた脳の部分は黒く映る特性があります。そして決断力が高い人の脳は、全体的に黒っぽい画像になるのです」
■脳番地が未発達だと脳の指令に不純物が混ざる
ゴルフでも悩む場面は多い。そのとき、スパッと決断できる人は脳のさまざまな番地が発達しているとのこと。脳番地の発達と決断力にはどんな関係があるのだろう。
「ショット前には、残り距離や風の強さ、足元のライ、過去の経験など、多くの情報を処理してどんなショットを打つか『判断』を下す必要があります。このとき、思考系、感情系、記憶系などあらゆる脳番地が総動員されます。しかしいざ『決断』してスイングのモーションに入ったら、運動系と視覚系以外の脳番地からの発信はシャットアウトしなければなりません」
ところが脳番地が未発達だと、ショットの動きに入っているにもかかわらず、「やっぱりツマ先下がりか?」「ボギーを取り返したい!」など、別番地からの情報が不純物として入り込んでしまうのだ。
「脳と体のつながりは、非常に精密です。脳からの指令が複雑になるほど、体の動きも複雑になります。ですから迷ったまま打ったときほど、信じられないようなミスをしやすいのです」
もし動き出してから迷いが生じたら、スイングを止めて『判断』からやり直すことが、大ケガを防ぐコツだという。
■「判断」と「決断」の切り替えを脳に教える
ゴルフにおける決断力を高めるには、何をすればいいのだろう。
「脳から筋肉への指令には、簡単に不純物が混ざります。それを防ぐには、前夜にしっかり眠ることが大前提。睡眠不足は脳のパフォーマンスを下げる天敵です」
日常的な脳番地のトレーニングも有効だという。
「脳は、どこまでが『判断』で、どこからが『決断』なのかを区別しません。だからこそ、自分でその切り替えを、明確に意識することが大切です。また、決まり切ったルーティン動作のときほど、脳の指令に不純物が入りやすいもの。ですから、普段とは違う視点を持ったり、あえて異なるやり方を試してみたりすることで、脳に新たな刺激を与える習慣を持ちましょう」
ゴルファーが決断力を鍛えるための具体的な脳番地の強化方法を10個教えてもらった。
