近頃、多くのトッププロが口にするキーワードがある。それは、「スイングは腸腰筋がカギ」。 ん? 腸腰筋? どこにあって何をしている筋肉? スイングにどう効くの? 聞き慣れない謎の筋肉の正体と鍛え方に迫ってみた。
■上半身と下半身をつなぐロープのような筋肉
腸腰筋と聞いても、ピンとこない人も多いだろう。「腸腰筋は、背骨から骨盤の内側を通って太モモにつながる筋肉。背骨と腰と足をつなぐ“体の芯のロープ”のような存在です」と話すのは、スポーツトレーナーの顔も持つ常住充隆プロ。筋肉はアウターマッスルとインナーマッスルに分けられるが、腸腰筋はインナー中のインナー。腰の最深部にある。
「腸腰筋の大きな役割は2つ。足を引き上げること、そして姿勢を保つことです。弱ると骨盤が倒れて腰椎のS字カーブが崩れ、猫背や反り腰になって、腰痛の原因に。姿勢が悪いと腹に力を入れにくくなり、中年太りの出っ腹体型にもなっていきます」
この腸腰筋、中高年になると弱りやすいという。
「走る、ジャンプするといった動きで鍛えられるため、若い頃はスポーツなどで自然と使えています。その貯金が50~60代で尽き、弱ってくるんです」
腸腰筋はゴルフスイングにも大きく関わる。
「飛距離が落ちた、ミスが増えた……そんな人は腸腰筋の衰えを疑ってください」
あなたは腸腰筋を使えているのか。まずはテストでチェックしてみよう。
【腸腰筋を使えている? チェックテスト】
イスに浅く腰掛け、上体を前傾して両手を合わせたら、足を大きく開く。左右交互に足だけを床から浮かせる。体を傾けたり反動を使わないと上がらなかったり、そもそも力の入れ方が分からない人は、腸腰筋がかなり衰えている証拠だ。
■ネジる・踏み込む・振り抜く……腸腰筋はスイングの心臓部だ!
スイングパワーの源は太モモや尻、背中などの大きな筋肉であるのは間違いないが、腸腰筋が働かなければそれらの力は球に伝わらない。腸腰筋こそスイングの根幹を支える筋肉。スイングにおける大きな役割を担っている。
ツアー4勝を挙げる浅地洋佑も、腸腰筋を意識しながらトレーニングを行っていると話す。そんな浅地に山下美夢有のドライバーショットについて尋ねると、強さを支えているのは腸腰筋のパワーにあるという。
「山下さんは腸腰筋が強いのでしょう。前傾姿勢をしっかりキープできていると思います。前傾角度が保てればミート率が上がり、ヘッドアップによるミスも防げます。さらに、腸腰筋がしっかりしていることで下半身の力も使えている。僕自身も腸腰筋のトレーニングは意識していて、尻や腰回りをバランスよく鍛えるよう心がけています」
腸腰筋が使えるメリット①
前傾姿勢をキープできる
股関節から骨盤を前傾させてアドレス姿勢を正しく作るには、腸腰筋の力が欠かせない。年配ゴルファーには棒立ちの構えになる人も少なくないが、これこそ腸腰筋が使えていない人の典型アドレス。そして構えたときの前傾角度を保ったまま、体を回旋させることができるのも腸腰筋のおかげだ。しっかりと前傾姿勢を保てることで、スイングの再現性が高まり、球の芯をとらえられる。また、手元が早くほどけにくく、切り返しでタメが自然にできるのも利点。
腸腰筋が使えるメリット②
しっかり踏み込んで地面反力を使える
腸腰筋が弱いと、ダウンスイングで体が伸び上がりやすくなる。では腸腰筋が強いプロたちはどうかというと、逆に股関節とヒザを曲げて沈み込む、いわゆる「スクワットダウン」ができる。股関節を屈曲させるこの動きにこそ、腸腰筋の力が発揮されるのだ。スクワットダウンで地面を踏み込み、その地面反力を回転力へ変えることで、スイング全体が一気に加速。その結果、ヘッドスピードが押し上げられ、下半身主導の力強いスイングが生まれる。
腸腰筋が使えるメリット③
スイングアークが大きくなる
腸腰筋が強いと、前傾角度を保ったまま股関節からしっかり体を回せるため、軸が安定しスイングアークが大きくなる。さらに骨盤と背骨、肋骨を結ぶ背面のインナーマッスル「腰方形筋(ようほうけいきん)」は、体幹の左右の傾きを支える役割を持つが、腸腰筋が弱いと十分に機能しにくいという特性が。つまり「腸腰筋が強い→アークが広がる+腰方形筋も働いて軸が安定→ブレない力強いスイングができる」ということだ。
腸腰筋が弱いと……
ダウンスイングで上体が起き上がりやすくなり、フェースが開いて下りてくる。ボールとの距離が乱れ、トップやダフリの原因にも。さらにアーリーリリースを招き、ヘッドが走らず飛距離が落ちる。
■自宅でラクラクながらでできる! 腸腰筋トレーニング
腸腰筋はインナーマッスルなので、負荷の高いきついトレーニングではなく、地味でじんわり効かせる動きが効果的。ラクに続けられるトレーニングを常住プロが教えてくれた。日々の習慣にして、飛んで曲がらないスイングを手に入れよう!
①座って足揺らし
イスに浅く腰掛け、片足を床と水平に真っすぐ前に伸ばす。そのまま伸ばした足を、水平から小さく下に揺らして上げる動作を20回。左右両方の足を水平に上げて揺らす。
②前傾ミニバウンド
両手を胸の前で組み、ヒザを曲げて腰を落とし、ハーフスクワットの姿勢を取る。その姿勢のまま小刻みに10回ジャンプ。着地のたびに最初と同じ姿勢を保つのがポイント。腸腰筋が弱いと太モモやふくらはぎの筋肉で跳んでしまう。「下腹の力で跳ぼうとする」ことに注力をすると、腸腰筋を使って跳べる。
③寝ながらヒザ寄せ
横向きに寝て、上の足をほんの少しだけ浮かせる。そこからゆっくりと、太モモ上げの要領で10回、ヒザを胸に引き寄せては戻す。片方の足が終わったら、もう一方の足を上にして同様に行う。
④イスde腸腰筋伸ばし
はじめに、腸腰筋と連動して働く「腰方形筋」の硬さを確かめる。足を肩幅に開き、下半身を動かさずに上半身だけを左右に倒す。右に倒しにくければ左の腰方形筋が、左に倒しにくければ右の腰方形筋が硬くなっており、そちら側の腸腰筋も硬化している。次に、イスに片ヒザを乗せ、前足を曲げて体重をかける。後ろ足の鼠径部(そけいぶ)がじんわり伸びるのを感じながら、体重をかけた状態で、10秒キープする。硬さチェックで硬かった側を重点的に行う。
【解説】
常住充隆
つねすみ・みつたか/1972年10月13日生まれ、千葉県出身。プロゴルファー、整体師、スポーツトレーナーとして活躍。筋肉や骨格に注目した、フィジカル視点のスイング作りを提唱している。
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