今回は、お風呂もセットって旅館なの? というお話です。
ゴルフを始めて戸惑ったという項目に『旅行のようでびっくりした』というものがありました。普通のスポーツなら考えられないほどたくさんの荷物を抱えて、ゴルフに行くことに戸惑うようです。
この戸惑いは、関東地方のゴルファーほど強いのです。原因はコースまでの距離が遠いことが多いからです。東京に住んでいる場合、片道1時間以内ならかなり近いコース、平均すれば片道1時間半、片道2時間までなら当たり前なんていう話もよく耳にします。地方に行くと、地元密着型のコースが多く、家から30分以内で到着するゴルファーが来場者の半数以上というのが当たり前だったりすることを考えると、同じ国とは思えない違いです。
交通の便が良くない山の中にぽつんと作られたコースが、ゴルフの大衆化を加速させたのだという説がありますが、遠くとも、コスパが良いコースなら大歓迎だというゴルファーも増えています。
真冬のある日。海外から来たゴルファーと日本のコースをプレーしたときのことです。1回も気温が2桁にならなかったので、凍えて戻ったクラブハウスで、彼をお風呂に案内しました。習慣の違いで、シャワーは使うけれど、湯船につかるのはごめんなさい、という海外の人もいますが、説明を聞きながらゆっくりと湯船につかった彼はしみじみと言ったのです。
「ゴルフとお風呂がセットという文化は日本独特ですが、この来日中で、この瞬間が一番幸せです」
ゴルフは数時間は仲間同士で密着した付き合いになります。仕上げに裸の付き合いができることは、下手な旅行よりも濃密なのです。ゴルファーたるもの、文句を言う前に、その環境を上手に使いこなすのが正解で、腕の見せ所でもあると僕は考えています。
ゴルフを旅行にするのもしないのも、すべてはゴルファー次第です。どちらにしても、楽しんだほうが勝ちなのだと先人たちは教えてくれているような気がします。
さて、家風呂の普及で大風呂ビギナーが多くて困る、という話も面白いのですが…… それはまた、別のお話。
文・篠原嗣典/画像・GettyImages