スロー進行でイライラしがちなプロアマ形式のこの大会を、逆に自分のために活かすことにもスピースは長けていた。
「僕の調子がいいときも悪いときも、一緒に回るアマチュアが励ましの言葉をかけてくれる。それがすごく励みになる。だからここ数年、僕はこの大会が他のどれよりも好きだと感じていたんだ」
技術面から勝因を探れば、スピースは今大会の開幕前、パットの調整に余念がなかった。そして見い出したものは、「あまりストロークのことは考えず、両手がナチュラルに動くようになるまで練習したら、あとはスピードだけを意識してパットする」。
スピードがすべてだ――。そう信じてパットし続けたスピースは、3日目には13回の1パットを含めて合計わずか23パット。最終日は2番でバーディーを奪って以降、なかなかスコアを伸ばせなかったが、17番で長いバーディーパットをようやく沈め、18番も10メートル超のバーディーパットがもう少しで入りそうだった。
周囲に惑わされず、喧騒に乱されず。ようやくスピードが合ってきた。自分のペースがつかめてきた。今回のスピースの優勝は、そんな勝ち方だった。
「毎ホール、(キャディの)マイケルが『よし、退屈なゴルフを続けるぞ』と僕に言った。僕は本当は退屈なゴルフは嫌いなんだけど、言われた通り、退屈なゴルフを続けたんだ」