昨年。「グリーンジャケットを返したくない」と駄々っ子のように言っていたスピースは、その想いが強すぎたのか、自分のペースを乱し、躍起になり、そしてアーメンコーナーで崩れた。
その失敗をすでにスピースは省みて、再びグリーンジャケットを羽織るためには自分に何が必要なのかをオフのうちに見極めていたのだと思う。そう考えれば、昨秋からずっと試合に出なかったことも頷ける。トーマスや松山が勝利を重ねる姿を傍目に、落ち着き払った表情で今大会を迎え、そして勝利したことも「なるほど」と思える。
パットが「スピードがすべて」なら、マスターズに向けて調整し、優勝を狙っていく過程では「自分のペースがすべて」だ。
これからの春の数試合、そして今年のマスターズは、スピースが淡々と静かに優勝を狙う姿が見られるに違いない。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)