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アダム・スコットを変えたゴルフの恐さと魅力【舩越園子コラム】

アダム・スコットを変えたゴルフの恐さと魅力【舩越園子コラム】

配信日時:2016年2月29日 12時08分

 汗を拭うため、時折り外したキャップの下からは以前より格段に増えたグレーヘアがのぞいていた。今年からアンカリングが禁止になったため、武器にしていたロングパターをレギュラーパターへ持ち替え、それが彼のゴルフにどんな影響を及ぼすのかはゴルフ界全体の関心事。彼はそんな好奇の目に耐えながら、クロウグリップに似た方法で右手を添える独特のグリップを編み出し、この日は出だしから難しいパットを次々に決めていった。

 パットが入るという実感が自信となり、その自信が生来のショットメーカーの実力を肝心な場面で発揮させた。終盤の17番(パー3)。ハザードをぎりぎり越えてピン6メートルにピタリと付けたスコットのティショットとグリーン右奥のラフに沈んだセルヒオ・ガルシアのティショット。その差が勝敗を分けるきっかけになった。

 スコットはパー、ガルシアはボギー。2人の差は2打へ広がり、最終ホールの18番へ。冷静にレイアップしたスコットにはクールな余裕が戻り始め、イーグルに賭けるしかなくなったガルシアの第2打は、あえなくギャラリーの群れの中へ。ほんの2ホール前までは、どちらが勝ってもおかしくない競り合いをしていた2人が、1ホールの1打をきっかけに、まるでヒーローとピエロのごとく分かれていったその様子。そこにゴルフの恐さを感じずにはいられなかった。

 ヒーローとピエロ。天国と地獄。それは1ラウンドの中でも、1試合4日間の中でも、1人のゴルファーのキャリアの中でも起こりえる。世界一に上り詰めながら優勝から遠ざかってきたスコットのこの2年間も、そうだった。快進撃を続けていながらパー3の15番で突然「7」を叩いたスコットの3日目も、そうだった。

 天才少年と呼ばれ、鳴り物入りでデビューしながら、いまなおメジャー未勝利で、今では優勝そのものから4年も遠ざかっているガルシアのゴルフ人生、然り。今大会の3日目を首位で迎えながら74を喫して蚊帳の外になったリッキー・ファウラーの歩みも天国と地獄。彼は上って落ちる悔しさをフェニックスオープンに続き、今週も噛み締めた。

 あっという間にヒーローをピエロに変えるゴルフは恐ろしい。だが、ピエロになりかけたゴルファーを再びヒーローに戻してくれるのもゴルフだ。

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