出場していた144人、いや、米ツアーにいるどの選手にも、いろんな想い、いろんな事情がある。その中で誰もが勝利を目指している。だが、勝利に輝くのは、たった一人だけ。一流選手ばかりがひしめく中で「たった一人」に輝けるかどうか。そのチャンスは千載一遇だ。地道に、地味に、長く長く、歩き続けられるかどうか。その途上に「千載一遇」の日が、きっとやってくる。
優勝トロフィーを最後に掴んだのは、地元カリフォルニアで生まれ育ったハーンだった。「ハーン」と言われて、すぐにその顔を思い浮かべられる人は少ないだろう。日本のみならず、この米国でも彼の存在感は薄かった。
「今日、プレーオフが決まったとき、ギャラリーのそばを通ったら、人々が『プレーオフだぜ。ダスティン・ジョンソンとポール・ケイシーと……あと、もう1人』と言っていた」
米ツアー3シーズン目を迎えながら、いまだに名前すら覚えてもらえず、認識もされず、戦い続けた日々。それでもシード権だけはぎりぎり維持して踏ん張ってきたからこそ、ハーンは勝利に漕ぎつく今日という日に巡り合えた。
松山英樹は今季5度目のトップ10入り、今年に入って5試合で3度目のトップ5入りを果たした。その成績は目を見張るほど素晴らしいけれど、彼の姿勢はむしろ地味で謙虚になりつつある。もちろん目標は常に優勝だ。しかし、息切れすることなく地道に歩む大切さを彼はしっかり噛み締めている。「少しでも上位に入って(ポイントを)少しでも加算したほうが、後々、自分に響いてくるので、優勝が無理でも捨てないでやるのが大事だと思う」。