ウッズもコモもスイングを大幅改造するつもりはなく、ウッズの体そのものが覚えている本能的、潜在的な動きを活かしつつ、仕上げていく方針だ。それゆえウッズはコモを「コーチ」とは呼ばず、「コンサルタント」と位置付けている。相談しながらのチューンナップならスピーディに効果が上げられ、3か月後のマスターズに向けた調整も間に合うかもしれない。
そんなふうにウッズのマスターズ優勝を期待する一方で、ローリー・マキロイのマスターズ優勝を心待ちにする声も大きい。2011年の全米オープン、2012年の全米プロ、そして昨年の全英オープンと全米プロを制したマキロイが、今年のマスターズを制すれば、その時点で夢のグランドスラム達成となる。
2014年の戦いぶりを振り返れば、マキロイには勢いがあり、戦い方、勝ち方、とりわけメジャーでの勝ち方やその感触が彼の心と体に生々しく残っているはずだ。若さゆえのエネルギーやパワーもある。ウッズが失ったもの、ウッズに不足しているもののすべてがマキロイにはある。
しかし、マキロイには勝利を阻むかもしれない余計なものもある。2011年のマスターズ最終日に大崩れした、あの苦い思い出。すでに「いい経験、いい勉強になったと割り切っている」とマキロイは言っているけれど、いざオーガスタで優勝を目前にしたとき、悪夢が再び蘇る危険性はもちろんある。ゴルフはメンタルなゲームだからこそ、悪夢は何度も蘇る。そこにグランドスラム達成というプレッシャーが加われば、悪夢はさらに巨大化するかもしれない。
そのプレッシャー、その悪夢を克服して優勝したら、もはやマキロイに怖いものは何一つなくなるだろう。その瞬間、無敵のマキロイ、最強のマキロイ時代がそこに生まれる。