見事、その切符を手にしたのは結果的にはロッド・パンプリング、グレッグ・チャルマーズ、ブレット・ラムフォードというオーストラリア人ばかりとなったが、選手たちが国境を超えて活動し、国籍とは無関係にチャンスや勝利を追い求めるボーダーレス化は、この「全英オープンへの道」のように、メジャー大会やビッグ大会の出場資格獲得を中心として、これから一層、活発化していくと思われる。
選手がどこで勝利を飾るか。そこに国籍というボーダーは、もはやない。どこの国で生まれたかではなく、どんな環境でゴルフを覚えてきたかのほうが勝利に及ぼす影響は大きい。今大会ではオーストラリアでも珍しいほどの強風が吹き、スコットやマキロイらを苦しめた。もちろん彼らだって強風が吹く環境でたくさんゴルフをしてきたけれど、スピースも生まれ育ったテキサスで強い風に吹かれながらゴルフの腕を磨いてきた。その経験が今大会で生きたことは言うまでもない。
もう1つ、スピースがゴルフを覚えた環境と言えば、彼は幼少のころから一人で黙々と練習を積んでいた。障害を持つ妹に両親が最大限の時間を割けるように、自分は両親を煩わせないようにという兄としての健気な気遣いから、スピースはできる限りゴルフ場に長居して練習に精を出していた。その体験が彼の精神力、忍耐や集中力を培ったのだろう。
ゴルフの試合で知らない土地に行くたびに、スピースはその土地のキーホルダーを可愛がっている妹のために買っていくそうだ。妹の大切な大切なコレクション。スピースは宮崎でもオーストラリアでも、きっとキーホルダーを買ったはず。そして、キーホルダーと優勝トロフィーを抱いて実家に帰るクリスマス休暇はもうすぐやってくる。
クリスマス休暇が終わったら、スピースも世界のプロたちも、あっという間に始動だ。グローバル化、ボーダーレス化が進むゴルフ界は、ああ、本当に忙しい――。