コーチは絶対不可欠と考える姿勢は、タイガー・ウッズを筆頭にフィル・ミケルソンにも他の大半のトッププレーヤーたちにも共通している。ウッズが初めてコーチの指導を受けたのは4歳のとき。初代コーチはルディ・デュラン。ジュニア時代はジョン・アンセルモ。ジュニア時代後半からプロ入り後の2002年まではブッチ・ハーモンで、4代目はハンク・ヘイニー、5代目はショーン・フォーリー。そして今はコーチ不在に陥り、誰が6代目に選ばれるかが注目されている。
ミケルソンに至っては、スイングコーチのみならず、ショートゲーム専門コーチやパット専門コーチ、メンタルコーチという具合に様々な専門家を揃え、その総合力を活用してこそスマートなフィル流であることをアピールしている。
とはいえ、教わったことはすぐに忘れても、自分自身で苦労して学んだり身に付けたりしたことは生涯忘れないという現象は、自転車の乗り方のみならず、ゴルフにも当てはまる。バッバ・ワトソンは生涯一度もコーチを付けたことがなく、すべてが我流。だが、1度目のマスターズ制覇の際の決め手となった一打は幼少時代から自宅の庭の大木を交わしながら覚えたインテンショナルフックそのもので、「僕は自分で気づいて覚える分、他の選手たちより時間がかかるスローラーナー。でも覚えたことは決して忘れないし、僕だけのものだ」と誇らしげだ。
石川や松山は、今のところは、このワトソンに似たタイプと言えるのだろう。だが、時間がかかると知りながら、あえてスローラーナーを目指す必要もないわけで、望むらくは諸々の「いいとこ取り」だ。何のどんな「いいところ」をどうやって採り入れるかが今後の課題になる。柔軟な考え方で石川流、松山流を築いていってもらいたい。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)