ウッズ不在でも話題は豊富。いや、ウッズ不在だからこそ、新たなる勝者、新たなる王者が生まれていった。
しかし、だからと言って、ウッズ時代が別の誰かの時代に完全に移行したかと問われたら、その答えも「ノー」だ。この夏のマキロイは確かに圧倒的な強さを見せたが、その圧倒性がシーズンエンドまで続いていたとは言い難い。かつてのウッズは、1つ勝ったら2つ、3つと続けざまに勝つ爆発力を持ち、さらにその強さを年間、あるいは数シーズン、維持継続していたからこそ、ウッズ時代が築かれた。だが、前述した今季の活躍者たちの圧倒性の継続期間は、せいぜい数か月どまりで、いわば刹那的。その期間の短さ、刹那性こそが、いまなおウッズ以外の誰かの時代を確立できない原因だ。
けれど、新時代の担い手となりうる候補者が何人もいるとわかったのだから、将来性という意味で、今季は大漁旗を掲げていいのだと思う。それに、マスターズで優勝を競い合い、2位になったジョーダン・スピース、メジャー4大会すべてでトップ5(5位、2位、2位、3位)に入ったリッキー・ファウラーなど、勝てずとも大活躍を見せた若者たちもいた。デビュー年に早々に初優勝を飾った松山英樹にも今後の活躍が大いに期待できる。そんな彼らに、さらなる爆発力と継続性が加わったとき、ウッズ時代が彼らの時代に完全推移するはずだ。
ウッズ不在ながらエキサイティングでもあった米ツアーの今季は、日本の童謡に例えるなら、新時代へ向かって芽が出て膨らんで花が咲く少し手前の年。だが、遠くへ飛ぶための助走、高く飛ぶための沈み込みが、とても上手くなされたシーズンだったと私は思う。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)