こうして見ると、クラークは、いつも困窮の果てに救われている。下積み時代にカナディアンツアーで続けざまに2勝を挙げたときもそうだったし、今回の復活優勝もそうだ。どうして彼はいつも最後まで信じ続けることができるのか。
その答えは、きっとこの出来事の中に見て取ることができるのだと思う。
クラークが肘の故障にまださほど苦しんでいなかった2005年。母国で開催されたネルソン・マンデラ・インビテーショナルという大会で得た賞金を、クラークは一人の少女に寄贈した。少女は耳が聞こえなかった。が、ある手術を受ければ聞こえるようになると言われていた。高額なその手術を少女に受けさせてあげたい一心で、クラークは自らが得た賞金をその少女に贈り、手術を受けた少女は音のある世界で生きられるようになった。
信じていれば、きっと最後に救われる――少女もそう思ったに違いない。そんな少女の姿を見て、クラーク自身もそう思ったに違いない。だから彼は、肘の故障で苦しい時期を過ごしたときも「きっと最後に救われる」と信じ続けることができたのだろう。
72ホール目。ウイニングパットを沈め、握りしめた拳を振り降ろして200週ぶりの勝利の味を噛み締めたクラーク。溢れ出しそうな涙をぐっとこらえた姿に涙を誘われた。