石川遼が成果の出ている合宿を切り上げ全英出場を決めた理由
06年大会の際のウッズの勝ち方という話になると「72ホールでドライバーを1度しか使わず、2番アイアンを多用して勝った」というのが、まるで決まり文句のように持ち出される。確かに、ウッズがドライバーを握ったのは初日の16番(パー5)の1度きりだった。だが、だからと言って「2番アイアンの勝利」と呼んでしまうのは短絡的すぎる。
あのときウッズに勝利をもたらしたものは、2番アイアンのみならず、ティショットに用いた多様なクラブ。そして、それらのクラブと次打のクラブのコンビネーション。ウッズの言葉を借りれば「リンクスゴルフはイマジネーションとクリエイティビティの勝負」であり、あのときのウッズの勝利はまさに「想像力と創造性の勝利」だった。
そもそもロイヤルリバプールのフェアウエイは「ペンシル・シン(鉛筆みたいに細い)」と表されるほど細いのだが、06年大会のときは、コース側が前年から散水を極端に制限し、意図的に固いフェウアエイとグリーンを作り出し、思惑通り、何百ヤードでも転がりそうなフェアウエイが出来上がっていた。とんでもなく細く固いフェアウエイの両サイドには深いラフが鬱蒼と茂り、80個とも100個とも言われる英国特有のポットバンカーが点在している。ここに強風が加われば、選手たちは四重苦、五重苦を強いられるわけで、1つでも「苦」を減らすべく、ウッズはドライバーの封印を決意した。
「バンカーさえかわせて、グリーン上で勝負できれば十分に勝ち目はある」