「こんな大差で最終日を迎えるなんて初めてだ。ただただ、グッドショットを打つことを心がける。グッドゴルフをしていれば、結果は自ずとついてくる」3日目の夜、ウォーカーは、そう言った。
だが、2位と大差をつけていようとも、優勝の二文字が意識の中に「ある」と「ない」とでは、プレーぶりはまるで異なってくる。「ただただグッドショットを打つ」という、トッププロたちにとっては当たり前のことができなくなる。
いやいや、大差をつけて最終日を迎え、勝って当然と言われる立場に立っていたからこそ、崩れ始めたときに「まさかの逆転負け」という最悪のシナリオが頭をよぎり、彼の心は大きく揺れた。
10番、12番、13番。続けざまのボギーで2位との差は縮まっていき、上がり3ホールにさしかかったとき2位とは2打差。3パットした17番(パー3)のボギーで、ついには1打差へ。それでも18番(パー5)をパーで上がれば優勝できる。ティに立ったウォーカーは、あえてアイアンを握ったにも関わらず、打ち出した球はへなへなと右へ曲がり、フェアウエイバンカー際の深いラフの中に沈んだ。
ボロボロだった。下向き加減に歩くウォーカーの姿は、試練にさらされ、試され、どうにか耐え忍んでいる苦しい姿だった。