その輝かしい瞬間を人々は心待ちにしていた。もちろん、スコット自身も――。
けれど、スコットから4打差で最終日をスタートしたマキロイがバーディーやイーグルを重ねてスコットに並び、ついには逆転し、スコットが王手をかけていた勝利を奪い取る結果になった。
今年、不調に喘ぎ、未勝利の1年で終わりかけていたマキロイにとって、この優勝はうれしさもひとしおのはず。だが、彼は自分の喜びよりも「アダムのトリプルクラウン達成を阻んでしまったことが申し訳ない。僕は優勝できたことより、世界のベストプレーヤーであるアダムを倒したことに満足感を覚える」と語った姿が印象的だった。
勝ちかけた選手、誰もが勝利を信じた選手が、最後に負ける。勝負の世界ゆえ、そんな逆転劇はしばしば起こるものだが、中でも鮮烈だったのは昨年のファーマーズインシュアランス・オープンで、首位を独走していたカイル・スタンリーが最後に大崩れして初優勝を逃し、ブラント・スネデカーが優勝を飾ったあの大逆転劇だった。
敗者となったスタンリーは、悔しさをこらえきれず、会見で号泣した。勝者となったスネデカーは優勝会見で自分の喜びを語る前に「たとえこの地球上の僕の最大の敵であっても、あんなふうに崩れる悔しさを味わってほしくない」と、敗者を気遣う言葉を口にした。