目指すべきスコアが見えてこないから、誰もが暗中模索。それは、1つ2つとスコアを落としていったとき、どこまで自分を信じ、諦めず、再びスコアを戻せるかの我慢合戦。飛距離やショットの正確性や小技やパットの巧拙はもちろん求められるけれど、最後の最後は精神戦になっていたのだ。
最終日を単独首位で迎え、最終組でスタートしたミケルソンが3番、5番で続けざまにダブルボギーを喫したのは、勝利に向かって逸る気持ちを抑えきれなかった何よりの証だ。「ボギーに抑えるべきところをダブルボギーにしてしまったのが致命的だった」。
一方、ミケルソンから2打差の5位から最終日をスタートしたローズは「リーダーボードは、なんとなく見るだけに留めた。このコースでは自分の気持ちを先走らせないことが大事だと思っていたから」。メジャーという大舞台の大詰めで、そんな一歩引いたスタンスを保ち続けることができたのは、ローズが長年、茨の道を歩んできたからだろう。
98年の全英オープンに17歳のアマチュアとして出場し、4位になって脚光を浴びたのは良かった。が、すぐさまプロ転向したら21試合連続予選落ち。欧州ツアー初優勝までに4年を要し、米ツアー初優勝までに12年を費やしたローズは、もはや焦ることの無意味さと危険性を痛感していた。
とはいえ、勝利を重ねるにつけ、年々、自信を高めてきた。「この2〜3年、調子は着実に上がっていた。メリオンはメジャーで勝つベストチャンスだと思って乗り込んだ」。それは一歩引きながら狙いを定め、着実に仕留めた勝利だった。