18番の第2打がカップインしたかと思ったあの瞬間、思わず頭を抱えたミケルソンの驚きと興奮。あのリアクションには、いろんな意味合いが含まれていた。もしも直接カップに沈んでいたら、この試合で「優勝できる」。そう思ったことは間違いない。
だが、それ以上にミケルソンが感じていたのは「今週、好調なら、来週も好調のはず」という想いだ。そして、その想いは「今週勝てれば、来週も勝てる」という想いへ発展していく。あの第2打がカップインするかどうかは、今週のみならず来週の全米オープンにおける彼のゴルフの指針になる。だから彼はあのとき、思わず頭を抱えるほど興奮したのだと思う。これまで何度も全米オープン優勝に王手をかけながら、最後の最後に信じがたい何かが起こり、惜敗してきたミケルソン。だからこそ「奇跡を信じたい」。そんな気分なのだろう。
優勝を手に入れたのは、ストーリングスでもミケルソンでもなく、ハリス・イングリッシュだった。ツアー2年目、プロ3年目の23歳。初優勝とは思えぬほど冷静なプレーぶりで勝利した。が、その陰にはやっぱり何かしらの巡りあわせの幸運もあったのだと思う。もしもイングリッシュが単独首位で最終日を迎えていたら、もしもミケルソンと同組で回っていたら、もしもミケルソンのあの第2打がカップに沈んでいたら、結果は違っていたかもしれない。
そうやって予想すらしなかったことが原因やきっかけになり、予想すらしなかった結末を迎えるのがゴルフだ。今週、イングリッシュは優勝し、ストーリングスは惜敗し、ステファニーは大敗し、ミケルソンは今日の奇跡が明日の奇跡につながると信じながらメリオンに向かっていった。
勝利と敗北の分かれ目は、細い細い、本当に繊細な1本の線。そのファインラインのどちら側に立つかが、勝つか負けるかの差。ゴルフは実力だけでは勝てないと言われる由縁は、そこにある。