史上初のオーストリア人優勝、勝敗を分けた「幸運」と「不運」【舩越園子コラム】

3日目まではステディーなプレーを続けていたバーガーが、3番でダブルボギー、5番、6番で連続ボギーを喫し、崩れていった様子は悲痛だった。それでも14番でチップイン・バーディを奪い、ガッツポーズを取った姿には彼の意地が感じられた。

だが、すでに単独首位でホールアウトしていたセップ・ストレイカから2打差で18番（パー5）を迎えたバーガーは最低でもイーグルが必要だったが、第2打を池に落とした瞬間、万事が休した。

バーガーから5打差でスタートしたシェーン・ローリーは着々と追い上げ、追いつき、一時は単独首位に立った。しかし、2019年の全英オープン制覇以来の優勝ににじり寄ったローリーも終盤はやはりプレッシャーを感じていたのだろう。18番で最低でもバーディが必要だったローリーは、ティショットを左ラフに入れ、2オンが狙えず、パーどまりとなった。

その瞬間、ストレイカの逃げ切り優勝が決まった。まさに、追われる者のつらさと追う者の強さのコントラストが如実に感じ取れた展開だった。

5打差から逆転優勝したストレイカはオーストリア出身の28歳。14歳のときに家族で米ジョージア州へ移り住み、双子のサムとともにマスターズ出場を夢見ながら地元のジョージア大学へ進み、2016年にプロ転向。下部ツアーを経て、2019年にオーストリア人として初のPGAツアー入りを果たし、そしてこの日、ホンダ・クラシックを見事に制し、オーストリア人初のPGAツアー初優勝を達成した。

前半で1つスコアを伸ばし、後半は14番、16番、18番でバーディを奪って単独首位に浮上。最終ホールは12メートルのイーグルパットがぎりぎり入らず、タップイン・バーディでフィニッシュ。余裕さえ感じられる締めくくりだったが、ストレイカ本人は「ナーバスだった。18番は2打目をグリーンに乗せ、2パットで終わることができて本当に良かった」と振り返った。