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【小川淳子の女子ツアーリポート“光と影”】日本女子ツアーガラパゴス化への懸念

【小川淳子の女子ツアーリポート“光と影”】日本女子ツアーガラパゴス化への懸念

所属 ALBA Net編集部
ALBA Net編集部 / ALBA Net

配信日時:2018年5月29日 21時12分

現在、日本開催の米ツアーは「TOTOジャパンクラシック」のみ 日本ツアーは“ガラパゴス化”が進んでいる?
現在、日本開催の米ツアーは「TOTOジャパンクラシック」のみ 日本ツアーは“ガラパゴス化”が進んでいる? (撮影:GettyImages)
日本の女子ツアーはガラパゴス化してしまうのか?そんな恐れを抱かせるニュースが飛び込んで来た。

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5月23日に発表されたのは、2019年、韓国で新たに米国女子ツアーの一戦が行われること。スポンサーはBMWグループで、賞金総額200万米ドル(約2億1700万円)、優勝賞金30万米ドル(約3200万円)。コースは釜山のLPGAインターナショナル・プサンであること。契約は3年間であることなどだ。

米女子ツアーは来年の日程がまだ明らかになっていないため、詳細は後日発表されることになるはずだ。今年の実績では米女子ツアーは34試合中、米国以外での開催が15試合。実に半分近くが海外で行われることになるが、カナダをのぞくと、その先がけといえるのが日本だったというわけだ。

だが、日本で行われている「TOTOジャパンクラシック」は現在、15試合のうちの1つに過ぎない。日本ツアーが盛況で他の試合が入る余地がない、といえば聞こえはいいが、それを言い訳に世界から取り残されつつあるのではないか。別に、韓国、中国が2試合ずつ開催していることと比べているわけではない。米LPGAが韓国の存在を重要視していることの意味をしっかり考えるべきだろう。新大会の舞台となるLPGAインターナショナル・プサンは、米LPGAにおいて初めての海外拠点。積極的に米国以外での展開を進める米LPGAがティーチング&クラブプロフェッショナルセンターを置き、Qスクール・地区予選の会場にしていることでもその重要度はよく分かる。

1998年のパク・セリ登場以降、世界の女子ゴルフ界において韓国の存在感はみるみる増してきた。メジャータイトル、ロレックスランキングには韓国選手がずらりと並び、国籍は米国や豪州でも、韓国系の名前が占める割合も多い。米女子ツアーは、半ば“乗っ取られた”かのような状態が今も続いている。

自国選手以外の活躍が目立つことで、米国企業のスポンサーが減り、一時は試合数の維持に苦労もしたが、米女子ツアーはこれを逆手に取った。そう、韓国系企業スポンサーを増やすだけでなく、自ら海外に出ていく戦略を取り始めたのだ。韓国は、その大きな足掛かりとなった。

古くからのゴルフファンの方ならすぐにピンとくると思うが、実は、30年以上前、同様のことが米国と日本の間で起きていた。もちろん、日本の経済状況も関係するが、これを引っ張ったのが岡本綾子だ。87年に米国勢以外で初めて賞金女王となった岡本の活躍に応じて、米女子ツアーには日本のスポンサーが増えた。中でも、岡本の出身地、広島に本拠を置くマツダは力を入れ、マツダLPGAシリーズとしてポイント制のタイトルまであったほどだ。

その流れで始まったのが、現在は「TOTOジャパンクラシック」として行われている日本で開催される唯一の米ツアー(日本ツアーの一戦でもある)だ。当時は「マツダジャパンクラシック」と呼ばれ、米女子ツアーの最終戦。前週には日米対抗戦が行われてもいた。岡本というスーパースターの存在が、スポンサーへのアピールも含めて、日本女子ゴルフ界の存在感を一気に大きくしたことの証明でもあった。この時点で、日米女子ツアーの関係がもっと深まっていてもおかしくなかった。いや、そうするべきだった。しかし、実際は試合を持ってきたプロモーター任せ、スポンサー任せのまま今日に至っている。

その間、ロレックスランキングでナンバー1になった宮里藍の活躍もあったが、岡本のときのようになることはなく、逆に日本ツアーが充実したことで海外進出を考えない選手も増えた。韓国を中心にした海外の強豪が日本にも乗り込んできたことでツアーの底上げは進んだが、米ツアーを中心とした世界の舞台と一緒になって何かを行う方向には至っていない。むしろ、閉鎖的な体質を前面に出していたという話は数多く聞こえてくる。

こうして、気が付けば米LPGAの海外拠点は韓国になり、韓国選手の米女子ツアー進出にはますます拍車がかかることになる。今回、発表された新しい試合に、欧米の男子ツアーのスポンサーでもあるBMWグループが付いたことで、この大会にはさらにハクが付いた。世界の女子ゴルフにおいて、韓国の重要度がそれほど増したといい換えてもいい。

一方、日本女子ツアーは、周囲の状況などどこ吹く風。マイペースといえば聞こえはいいが、閉鎖的な方向に進んでいるようにすら見える。“外国人締め出し”ともとれる来年以降のQT制度改革がその最たるものだ。このままではツアーが“ガラパゴス化”し、世界に置いていかれてしまう可能性もある。

選手という大切な財産が、世界中を渡り歩くようになった今、求められるのは、自国ツアーや自国ゴルフ界という小さなことではなく、世界レベルでの広い視野だ、それが、ツアーだけでなく子どもたちの教育としてのゴルフという観点にまで広がらなければ、将来はない。(文・小川淳子)

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