大きなイベントになればなるほど、一度決めたスケジュールを変更することは難しい。天候は人知の及ぶところではなく、その条件下で我々はできることをするしかない。それでも、出場選手や周囲のためにできる限りのことをしなくてはならない。
今回の東京マラソンに関しては、幸いなことに今のところ、大きな事故だったという報告はなさそうだ。気温の低さと雨で主催者を攻めるのは筋違いだろう。それでも、条件の整ったトップランナーたちでさえ、直前に寒さの中にいることを強いられた環境は、もう少し考えられてしかるべきなのではないか。スタート前の待機時間が30分近くになる一般ランナーたちからは「そこが一番大変だった」という声も噴出している。
これは、今回とは正反対の猛暑の8月に行われる東京五輪への大きな教訓でもある。マラソンは、スタート時間を早めて対応しているが、それでも、競技中の選手は、集中するあまり自分の体調の変化に気づかないことがある。選手以外のスタッフやボランティア、観客などはなおさらだ。
ここで気になるのがマラソン同様、いや、考えようによってはマラソン以上に危険と思えるゴルフ競技の準備についてだ。東京よりも暑い埼玉県の霞が関CCで猛暑の中に行うという信じられない決断は、いまさら変えることはできない。そこで、どれだけ選手、スタッフ、ギャラリー、ボランティアを酷暑から守ることができるのか。それぞれが建物に避難しやすい都内ではなく、ゴルフ場という特殊な空間では、暑さから逃れる場所は主催者側が用意するしかない。そこに万全の策が取れるのか。日本代表として女子の選手も2人は参加することになる東京五輪だけに、準備不足では許されない。
さらに、五輪直前には「プレ五輪」として日本ジュニアも同じ霞ヶ関CCで開催すると言う。これをプレ五輪として行うこと自体もまったくおかしなことなのだが、それはまた別の機会に。年々、暑さがひどくなる状況も鑑みず、以前と同じように夏休み期間であるとか、ゴルフ場の都合で使わせてもらう、などという理由で、ジュニアたちを酷暑にさらす愚をいつまで続けるつもりなのだろうか。将来の有望選手や、五輪代表選手、そしてファンを含めた大会に携わるすべての人たちを危険な目に遭わせないために、最大限の努力が求められる。(文・小川淳子)