だが、結果が出ない中でも宮里を支えたのは家族だった。ゴルフを与えてくれた両親、離れていても常に連絡を取り合う兄・聖志と妹の藍。そしてなにより07年に結婚した妻に何度も支えられた。「妻は僕のせいでいろいろ言われたと思うし、辛い思いをさせてきたと思います。これから幸せにしたい」。
そう語った夫を涙で見つめた紗千恵さんは、宮里が悩んでいる時期も無言の愛をつらぬいていた。「シードを何年も守ってくれて活躍してくれていることがすごい。優勝というのは人から何回も言われていると思うので、2人の中で優勝という言葉を話すことはなかったです」。そんな妻の気遣いが痛いほどにわかっているからこそ、なによりも優勝を届けたかった。
家ではゴルフの話をしなかった宮里も今年の「コカ・コーラ東海クラシック」で最終日を2位タイでスタートするときに初めて妻に「絶対優勝してくるから」と宣言。結果は13位タイに終わったが、2人の子供にも恵まれた家族へ恩返しをしたいという思いは強くなっていた。
そして迎えた2013年シーズン最終戦。前週の「カシオワールドオープン」で7位タイに入り、滑り込みでつかんだ大舞台に待ち焦がれた歓喜の瞬間はあった。劇的な幕切れに酔った8,065人の大ギャラリーは宮里の12年分の思いをしっかり受け止めた。