新規ゴルファーの増加は良いことだが、マナーの手ほどきを受けていないゴルファーも多くなっている。そんな、良かれと思った行為が逆に仇となってしまうマナーに関する話を、四六時中ゴルフ漬けのロマン派ゴルフ作家・篠原嗣典が語る。
「今日は30ヤードルールを徹底してお願いします」
スタートホールで、知り合いでも、顔見知りでもない前組の人からいきなり言われて、戸惑っていたバブル入社世代の友人の話。
「エチケットとして、ご存じですよね?」と、さらに念押しされたそうです。相手は40歳前後に見える若いゴルファーで、色々と納得できない様子で、愚痴っていたそうです。
エチケットは約20年前まで、ゴルフルールの第一章に書かれていた「ゴルフをする上で守らなければ、ゴルフをする資格がない」と書かれた決まり事のことです。英語で書かれたゴルフルールの最初に出てくる項目が、フランス語の【etiquette】である意味深な謎を持ち出すまでもなく、エチケットは、英語のチケットと語源は一緒で、入場資格というよりもさらに強いニュアンスを持っている言葉です。
戒めの意味を含んで、強いてフランス語を採用した先人たちの想いを知っているゴルファーは、徐々に減ってきていて残念でなりません。
近年、時々耳にする『30ヤードルール』とか、『50ヤードルール』というのは、打球の落下音でビックリすることがあるので、届かないとしても、グリーンの近くに打つのを禁じた一部のゴルフコースのローカルルールが一人歩きを始めたものです。
このような〇〇ヤードルールは、エチケットには書かれていません。エチケットに書かれているのは、安全にプレーするための『打ち込み厳禁』です。打ち込みをする人は、ゴルフをする資格はないのです。
打ち込みをしないということを厳守すれば、逆に、落下音にまで気遣いをして、なかなか前に進まないプレーは、本末転倒でもあります。それは、エチケットの大きな柱の1本が、後から来るゴルファーを待たせてはならないというスロープレーを厳禁したものだからです。
究極の選択として、プレーファストを優先すべきか? 打ち込み禁止を優先すべきか? という論争は昭和の頃から続いてきました。なぜなら、プレーファストを徹底した結果、ギリギリまで狙って、失敗して打ち込み事故発生というようなことが実際に起きていたからです。議論の果てに、安全の確保が最優先、打ち込み禁止が優先されるという結論になるのも有名な話です。
ゴルフは心配りのゲームであることは、第一章エチケットがなくなった現在のゴルフルールの前文に明記されています。それを十分に考慮して、音にまで気遣う〇〇ヤードルールは、心配りとして確かに一流かもしれませんが、わざわざ後ろの組に、エチケットだと嘘までついて強制するべきものではありません。単なる勘違いだったとしたら誰かが間違いを正してあげるべきです。
単純な話を複雑にしがちなのは、ゴルフのあるある話です。最優先すべきは打ち込み禁止! それを徹底すれば、オールクリアとなります。
エチケットはルールの第一章という形で表記されなくなっただけで、今でもちゃんと存在しているのです。(文・篠原嗣典)
篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年東京都文京区生まれ。中学1年でゴルフコースデビューと初デートを経験しゴルフと恋愛のために生きると決意。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。ベストスコア「67」、ハンディキャップ「0」。
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