普段当たり前のように行っている呼吸は、体の動きや緊張・集中力のコントロールに密接に関係している。ゴルフのミスも日常生活での体の不調も、吐くことを意識した適切な呼吸を身に付けることで改善が見込めると、呼吸コンサルタントの大貫崇氏は話す。
ゴルファーは練習場で何百球と球を打ちますが、毎日約2万回も行っている呼吸に意識を向ける人は少ないです。それは、呼吸を動きとして見ていないから。スイングにテークバックやフォロースルーがあるように、呼吸にも吸って吐くという動きがあります。この動作がおかしいと体に不調が出たり、スイングが乱れたりします。
なぜ呼吸が重要なのか、理由は3つ。1つは当然ですが、呼吸を止めると死んでしまうという「生存欲求」。ただ、多くの現代人はストレスなどから呼吸が浅くなっており、しっかり息を吐く適切な呼吸ができていません。そのため、胸郭(肺に空気を入れるためのスペース)の容量を増やそうと、歩行やスイングで使うはずの筋肉を呼吸のために使っているのです。
2つ目が「数の論理」。上達のため数多く球を打ったり、何度もトレーニングしても、適切な呼吸ができていないと体に負荷がかかります。そのせいで、練習やトレーニングの成果が得られないのです。
3つ目は「自律神経」と呼吸が密接に関係している点。呼吸は自律神経に介入できる方法の一つで、息をしっかり吐くことで副交感神経優位になり、緊張や集中力のコントロールが可能になります。
このように、深い呼吸は体にもメンタルにも大きな影響を与えます。だからこそ、呼吸を意識することが重要です。具体的には、吸って吐いてを1回とし、1分間の呼吸の回数を計ってみてください。20回を超えたらレッドゾーン。高齢者を対象にしたとある論文では、睡眠時の呼吸が16回以上の人は死亡率が高いという調査結果もあります。逆に1分間に6回の呼吸になると、心拍数や血圧が落ち、鬱や不安尺度に対しても、さらに喘息や痛み、炎症にも優位でポジティブな影響があるとされています。
現状は12~20回の人がほとんどかと思いますが、まずは10回を目指し、徐々に減らしていきましょう。紹介した呼吸トレーニングを行えば、余計な筋肉に負荷をかけない適切な呼吸が身につき、呼吸の回数も減らせます。体の不調のほか、ゴルフのパフォーマンス向上も狙えます。
■深呼吸=吸うは間違い! 呼吸はしっかり吐くことが重要
呼吸とは横隔膜が上下すること。このドーム状の筋肉は肺とつながっており、横隔膜が下がると肺に空気が流れて息を吸える。現代のストレス社会では、緊張で横隔膜が下がったままの人が9割近くいて、息を吐き切れていないという。
【適切な呼吸トレーニング】
①お腹と胸を同調させる準備
ヒザを曲げて横になり、お腹と胸に手を当てて鼻から息を吸う。お腹と胸が同じだけ下がるように口をすぼめて息を吐く。次に、お腹と胸に置いた手が同時に同じ高さまで上がるように息を吸う。8~10秒かけて息を吐き、3秒間息を止める。
②肋骨を下げる
指を開いて肋骨全体を感じられるように両手を当てる。①同様、吸った後に8~10秒息を吐く。また吸って、次は長めに10~12秒程度吐く。このとき、お腹の横を使って肋骨が萎むように息を吐く。吐くときはお腹をへこませないように注意し、これを10回繰り返す。
③お腹を膨らませる
②のずん胴の状態で、腰骨より上、肋骨より下に手を当て、ゆっくり息を吐き肋骨を下げる。息を吐き切ったら肋骨はそのままに鼻から息を吸い、お腹を360度膨らませる。親指が押し返されている感じがしたらOK。①②と同様に長く吐きながら、呼吸を10回繰り返す。
■ラウンド中にすぐできる! ゴルフのミスを減らす呼吸
ゴルフはミスするスポーツ。焦りや緊張で体が強張り、ミスの連鎖を引き起こす。そんな悪循環を断つためにシーン別の呼吸を紹介。
シーン1:緊張して体も硬い朝イチティショット
OBなどのミスが出やすい朝イチのティショット。まだ体も硬い状態で、コンペではギャラリーの多さに一層緊張するなど、プレッシャーのかかる場面だ。
落ち着きを取り戻せるみぞおちの骨グリグリ
みぞおちの骨の際を左右1分ほど痛いと感じる強さで押すと、自然と肋骨が下がる。痛みでお腹の力が抜けて息が吐けるため、緊張もほぐれ、体の可動域も広がる。
シーン2:決めきりたい大事なパッティング
パーパットなどの大事な1打に限って、気持ちばかりが先行しやすいもの。肩に力が入ったり、手だけで打ってしまいがちだ。
“体幹が安定する“腰丸め呼吸”
腰から背中を丸めて少し膝を曲げる。パターを前に押し出しながら、3秒吸い9秒吐き切り3秒止める。これを3~5回。背中が丸まると胸郭が閉じて息が吐ける。重心も下がり体幹が安定。
シーン3:前の組が詰まっているときの待ち時間
せっかくいいリズムだったのに、前の組が詰まっていて待機を余儀なくされる場面。イライラしやすい状況をどう乗り切る?
体の連動を切らさないワキ伸ばし呼吸
背中と腰を丸めながらクラブを持つ側のワキを伸ばし切った状態で、3秒吸い9秒吐き切り3秒止める。これを左右3回。広背筋が伸びて体の動きを維持でき、気分もスッキリする。
■深い呼吸の習慣化をサポートするデバイスの活用も有効
つい忙しさで呼吸への意識が薄れがち。そんなときは「適切な呼吸」を思い出させてくれるツールが有用です。例えば『ston s』というデバイスは、浅い呼吸だと蒸気が出ますが、適切な深い呼吸ができていると蒸気は見えません。しっかり息が吐けているかの判断にもなります。(大貫氏)
ston s(ストンエス)
POWER CAFFEINE×Mint・REST GABA×Chamomile
深い呼吸の習慣化サポートデバイス。深くゆっくりとした呼吸を促しながら、カフェインやGABAが配合されたさまざまなフレーバーの味わいが楽しめる。
【解説】
大貫 崇氏
おおぬき・たかし/呼吸コンサルタント。アスレティックトレーナー。BP&CO.代表であり、呼吸専門サロン「ぶりーずぷりーず」店主。呼吸関連の企業研究や商品開発など、呼吸コンサルティング事業を展開。
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