石川遼が現状を語る「あのような1打のために練習している」
ゴルフファンの興味や期待が膨らむ中で72ホール目のフェアウェイに立っていたハーマンの姿は少々頼りなく見えた。17番でバーディを奪い、ジョンソン、ペレツと並ぶ通算9アンダーで18番のパー5を迎えたハーマン。一度は手にした5ウッドは彼にとってはグリーン手前へ運ぶための安全策のはずだった。だが、観衆から上がった落胆の声に反応し、彼は3ウッドへ持ち替えた。
そんなハーマンの姿にハラハラドキドキさせられた。案の定、彼の2打目はグリーン左奥へオーバー。観衆の落胆の声が聞こえてきた。木の枝を交わしながら低くしか球を出せない難しい寄せが残り、第3打はグリーンに乗っただけ。観衆の落胆のみならず、ハーマンの落胆ぶりも見て取れた。
だが、その直後、ハーマンは9メートルのバーディパットをカップに沈め、勝利をもぎ取った。激しいガッツポーズと雄叫び。グランドスタンドの大観衆の狂喜の声。
たった1打で大きな落胆が大きな喜びに一変するこういう瞬間こそがゴルフの醍醐味だとつくづく思った。「ああ、ダメだ」と肩を落とした選手が、たった1打でチャンピオンに様変わりした場面を目にすると、人生にもそんな大どんでん返しはきっと起こる、起こせると思えてきて元気が出る。ゴルフで人々に夢や勇気をあげるとは、そういうことだとつくづく感じた。