「シェル・ヒューストン・オープン」のリーダーズボード
だが、ドラマは起こった。クーチャーから6打差で最終日をスタートしたマット・ジョーンズが最後にはクーチャーと並び、プレーオフを1ホール目で制してツアー初優勝とマスターズ出場権を手に入れたのだから、いやいや、ゴルフは本当に何が起こるかわからない。最後の最後まで何が起こるかわからないものなのだと、あらためて痛感させられた。
終盤の2人の争いは、技術の差でも、経験の差でもなかったように思う。前日までパーオン率1位を誇っていたクーチャーの18番の第2打が、フェアウエイから池に落ちるほどの狂いを突然見せたのは、ひょっとしたら勝利を確信したがゆえの慢心や油断によるものだったのかもしれない。
だが、ジョーンズの18番のセカンドショットがグリーンから転がり落ちそうになりながらカラー近くでぎりぎり止まり、そこからの15メートルのバーディーパットがするりとカップに沈んだのは、なぜか。プレーオフ1ホール目でグリーン手前から打ったジョーンズの第3打がチップインしたのは、なぜか。その理由は、いくら考えても、もはや運としか言いようがない。いや、運という一言で片づけたくなければ、そこに至るまでの流れや勢い、気持ちの差。そこから醸し出された目に見えぬオーラのようなものが、幸運を呼び込み、ジョーンズを勝利へ導いた。そんな不思議な力に思えてくる。
それならば、なぜジョーンズには、そんな強い気持ちが出ていたのかというと、それはオージーパワー以外には考えられない。昨年のマスターズをアダム・スコットが制して以来、オーストラリア人選手たちは何かに目覚めたように勢いを増している。