嵐のように押し寄せる現実。その多くは厳しい現実だ。全英オープンで科せられたスロープレーの1打罰もその1つ。そして今大会の3日目にもスロープレーの注意を受けた。が、松山は「オレは遅くないっすよ。計られてもペナルティにはならないはず」と、きっぱり。そうやって厳しい現実を受け入れ、自分の中で咀嚼して、身に付けたり、かわし方を覚えたり。そうやって松山は猛スピードで成長している。
好調だったショットが先週のカナディアンオープンから乱れ始め、今週は「ショットがひどい4日間でした」と振り返る結果になった。が、松山は「あーあ、溜め息しか出ない」と本音を漏らしながらも、ショットが乱れた原因は何だったのかを考え、英国、カナダ、そして広大な米国大陸を移動しながらメジャーやビッグ大会を連戦している疲労が「体に影響しているのかな」と分析しつつある。
ショットの乱れを補いつつ、今週は21位。「アプローチが良くなってきているのは救い」と、ショットが不調の中でスコアを作るプロらしさも身に付けつつある。阿部監督は「日本とアメリカの芝の違いは、ほんのちょっとの差なんだろうけど、それが大きく影響することもある。そこに慣れてくれば……」と語り、経験と時間が松山の成長を加速すると信じている。
その経験は、単なる「いい勉強になった」「楽しかった」で済ませるわけにはいかない。「アメリカに行くという目標はプロ転向するときに英樹が立てた目標です。こうしてアメリカで試合に出ているのは、米ツアー出場権を取るという現実の目標をクリアするため。そのために使えるチャンスは全部有効に使えと英樹には言ってある」(阿部監督)。
監督の指令を心に刻んでいる松山は21位に終わった最終ラウンド後、「ここで決めたかったけど……」と残念がりながらも、すぐさま現実に視線を戻した。